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ロバーツ監督「ロウキは自己流だったから」ドジャースの奇跡…佐々木朗希を復活させたのは、プロ経験なし“30歳の投手オタク”だった「ロッテ時代から動画を見ていた」
posted2025/10/12 11:03
地区シリーズ第4戦・フィリーズ戦、3回を無安打2奪三振で抑えた佐々木朗希(23歳)
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph by
JIJI PRESS
どうやら、佐々木朗希は異次元の世界に突入したようだ。
地区シリーズ第4戦、ドジャースは相手投手のエラーという意外な形でリーグチャンピオンシップシリーズに駒を進めることになったが、脚光を浴びているのは、なんといっても佐々木である。
8回表、シュワーバー、ハーパー、ボームというメジャーを代表する重量級の打者を相手にワン、ツー、スリーの三者凡退。そして9回、10回まで投げ、9人を完璧に抑え込んでチームに大きく貢献した。
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いったい、佐々木に何が起こったのか? アメリカのメディアでも様々な分析がなされているが、私が目を通したところで、「傑作」と呼ぶにふさわしい記事がESPNのジェフ・パッサン記者から生み出された。
佐々木の復活劇を演出したのは、ドジャースのロブ・ヒルというピッチング・ディレクターである。まだ、30歳の若さだ。
ヒルは投球動作の解析を行い、なにか不具合があれば、その問題を改善するためのトレーニングをデザインする。
「投手オタク」と言っても過言ではなく、千葉ロッテ時代の佐々木朗希の登板を週に一度、映像で見るのを楽しみにしていたという。
わずか1か月前…9月上旬に始まった
9月上旬、ドジャースが佐々木をヒルのもとに送り込んできた。そのセッションは、質問から始まった。
「どんなことをルーティーンに?」
「いちばん楽に投げられる球種は?」
「11歳の時にコーチから言われたことで、いまも実践していることは?」
問診である。ただしヒルは、佐々木が自分たちを懐疑的に見ても仕方がないと考えていた。なぜなら、
・そもそも、アメリカ人が自分の投球メカニズムを理解できるのだろうか?
・今季、ドジャースの投手陣は故障者が相次いでいる
といったことが考えられたが、ただ一点、「君の投球を良くしたいと思っている」というメッセージを伝えたという。
ヒルが指摘したのは「骨盤」
ヒルは問題点を見抜いていた。

