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[白毛の継承者]マルガ「姉と違わぬ輝きを」
posted2025/10/13 09:00
text by

太田尚樹(日刊スポーツ)Naoki Ota
photograph by
Miki Fukano
アイドルだって、きっと癒やされたい。
「今日もよく頑張ったねえ、マルガ」
朝日に白む馬房から、幼子をあやすような声が聞こえてきた。
その名を呼ばれ、まるで白無垢をまとったようなサラブレッドが顔を出す。頰を寄せ、両目を閉じ、撫でられるがままだ。
「女の子はすごいよ。競馬が終わった次の日とか全然態度が違う。怒って耳を絞ってね。『なんであんなきついことさせたの』みたいな。だから『ごめんごめん』って」
いかつい顔を跡形もなく崩してじゃれるのは、調教師の須貝尚介だ。隣から嫉妬するように見つめていた牝馬に気づくと、また甘い声色でなだめにかかった。
国内外でGI17勝(地方含む)を挙げる59歳は、時間を惜しまずに愛馬たちの機嫌を伺う。実績でも毛色でも差別はしない。
「馬も何かを伝えたいんだよね。みんな喋れないしさ。それを行動で表現するわけでしょ。噛まれながらでも、辛抱強く遊んでたら慣れてくる。けっこう噛まれるけど……。時計も何個も壊されたし、ジャンパーもボロボロになった。でも、虎とかライオンじゃないから。痛いのは一瞬だもん」
腕時計を破壊された逸話は、マルガにとって5歳上の姉にあたるソダシの仕業だ。2020年の阪神ジュベナイルフィリーズで白毛として世界初のGI馬になったヒロインは、見かけによらずおてんばだった。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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