スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「ササキと信頼関係を築くのは時間がかかった」ドジャース関係者が重要証言…佐々木朗希23歳が復活したウラ側、投手スタッフ「下半身と肩を変えた」
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2025/10/06 17:04
フィリーズとの初戦。佐々木朗希(23歳)は5-3の9回から登板。1回を1安打無失点で抑え、メジャー初セーブをマークした
三振、二塁打、二塁ゴロ、そして三邪飛。わずか11球で貴重なセーブをマークした。
試合後、明らかになったのは、デーブ・ロバーツ監督が佐々木に登板を告げたのは9回表の攻撃中、ワンアウトを取られてからのことだった。ロバーツ監督は、「9回裏の打順の流れを考えて、8回のピンチを切り抜けたアレックス(・ベシア)をもう1イニング投げさせるよりも、朗希に任せた方がいいと感じた」と話した。「ひらめき」に近いものだったのかもしれない。
投じた11球のうち、7球がフォーシームで、4球がスプリット。フォーシームで100マイルを超えていたのが4球あった。
ADVERTISEMENT
この働きを続けていたら、間違いなく救世主になる。それにしても、1カ月足らずの間に起きた変化はなんだったのか? ドジャースのギャレン・カー人事担当副社長は、「自信」について言及した。
「いま、佐々木は自分がどれだけ好調かが分かっている。彼のスプリットは、私がいままで見たなかで最高レベルにあって、自分の持ち球に自信を持っているはずだ」
証言「信頼関係を築くには、時間がかかった」
「ジ・アスレティック」のファビアン・アルダヤ記者は、マイナーリーグでの「改善」について書いている。
ドジャースには「ピッチング担当ディレクター」という職種があり、佐々木はロブ・ヒル・コーチとともに問題点のあぶり出しを行ったという。ヒル・コーチが映像を見ながら分析して、佐々木の“悪癖”を指摘した。ヒル・コーチによれば、「下半身の使い方と、投球時の肩の使い方」に課題があり、改善に取り組んだという。
すると……球速、制球力が戻った。そして試合で結果を残すことで、佐々木は自信を取り戻したという。
大谷の入団時の会見にも出席していたアンドリュー・フリードマン球団社長はこの取り組みについて、
「相互の信頼関係を築くまでには、多少、時間がかかった」
とコメントしたが、ピッチング・ディレクターの処方箋が功を奏したのは間違いないだろう。
それにしても、ひと月前にはポストシーズンのピースとして考慮もされていなかった佐々木を、ここまで信頼するドジャースという球団、現場を預かるロバーツ監督の決断力には脱帽するばかりで、感動的でさえある。日本の球界には見られないダイナミズムを感じてしまう。
リリーフとしてわずか4度の登板で、佐々木朗希はドジャースにとっての「Xファクター」(予期せぬプラスアルファをもたらす選手のこと)であることを証明した。
ただし、未知数の部分もある。
クローザーとして連投が出来るのか? ということである。幸いなことに、フィリーズとの第2戦、第3戦ともに1日置きに行われるので、連投を避けられるのは好材料だ。
連覇を目指しながらも、恐怖の館に脅えてきたドジャースと、今季は満足な投球が出来なかった佐々木朗希自身の「運命の逆転」が始まった。

