猛牛のささやきBACK NUMBER

「何すればええん? という感じで」2年前の胴上げ投手が苦悩…オリックス・山崎颯一郎「肩甲骨と鎖骨周辺の2箇所が肉離れ」から剛球復活の舞台裏 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph byKYODO

posted2025/10/03 11:17

「何すればええん? という感じで」2年前の胴上げ投手が苦悩…オリックス・山崎颯一郎「肩甲骨と鎖骨周辺の2箇所が肉離れ」から剛球復活の舞台裏<Number Web> photograph by KYODO

CSに向けて頼もしい右腕が戻ってきた 

胴上げ投手が迷い込んだ“迷路”

 2023年は53試合に登板し、リーグ3連覇に貢献。クローザーを任される試合もあり、優勝を決めた9月20日には胴上げ投手になった。しかし昨年は5月末に上半身のコンディション不良のため登録を抹消され、そこから長いトンネルに入ってしまった。

「原因不明なんですけど、肩甲骨と右鎖骨周辺の2箇所が肉離れになってしまって。何もしなくても痛い状態で、そこから長引いてしまいました。その怪我からですね、バランスが崩れたのは」

 投げられるようになっても、力がボールに伝わる感覚がなく、フォームも見失った。

ADVERTISEMENT

 昨年の秋季キャンプでは、「こんな感じやったなというのが、やっと戻ってきました。投げ方も、感覚も」と晴れやかな表情で語っていたが、今年の春季キャンプではまた迷路に迷い込んでいた。

「あの時(秋季キャンプ)に掴んで、この(春季)キャンプに入る前までずっとよかったんです。でもキャンプに来ると、他の選手の投げ方とか、いろんなものを見ちゃうんで……。それでごちゃごちゃっとなってしまう。そのままで行けよって感じなんですけど、他のピッチャーのフォームを見ると、『あ、自分もこういう使い方したい』となって、ちょっとずつ崩れてしまうんです。ホント僕の悪い癖なんですけど」

「何すればええん?」苦悩の時間

 旺盛な向上心からつい、違うことも取り入れてみたくなり自分の投球を崩してしまう。シーズンに入っても本来の投球を取り戻せず、一軍と二軍を行ったり来たりの状態が続いた。だが8月6日に今季3度目の登録抹消となった際、考え方を変えた。

「あの時は、自分の中でもう本当に『何すればええん?』という感じでした。球は別に悪くない。でも大事なところで打たれる。いつもだったら、(ファームに)落ちた時はフォームをいじるとか、スピードを上げる、変化球を覚える、といったことをやろうとするんですけど、今回は、そうじゃないなと思ったんです。いろいろ考えた結果、自分は『ただ投げてんな』と思った。あまり考えずに投げていましたね。気合いというか、勢いで、キャッチャーの構えたところに思いっきり投げていただけ。

 そうじゃなく、もうちょっと自分で意図を持って、キャッチャーの意図も把握して投げようと。以前よりも考えるようになってから、ちょっと余裕を持てるようになりました。このカウントだったらゾーンに投げていいとか、ここは絶対にワンバンを意識して投げようとか、状況を理解しながら考えて投げることで、結構冷静に、落ち着いて投げられています」

【次ページ】 “たまたま”ではない三振ショー

BACK 1 2 3 4 NEXT
#オリックス・バファローズ
#岸田護
#山下舜平大
#山崎颯一郎
#若月健矢
#宇田川優希

プロ野球の前後の記事

ページトップ