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猛牛のささやきBACK NUMBER
「何すればええん? という感じで」2年前の胴上げ投手が苦悩…オリックス・山崎颯一郎「肩甲骨と鎖骨周辺の2箇所が肉離れ」から剛球復活の舞台裏
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2025/10/03 11:17
CSに向けて頼もしい右腕が戻ってきた
“たまたま”ではない三振ショー
2日連続で無死満塁を抑えたことについては、「あれは本当にたまたまで、もう一回やれって言われたら無理ですね」と謙遜しながら、手応えも滲ませた。
「すごく冷静で、以前の自分みたいな、いっぱいいっぱいの状態ではなかったです。2日目も、あまり意識せずに『点取られるやろ』ぐらいの気持ちで行きました。いつもは追い込んだら、三振取りに行こうとか思ってしまって、力がバッと入り、思ったよりも内に入って打たれるとか、決めきれないというのがあったんですけど、あの時は色気は出なかった。中に入らないようにまっすぐを投げたら結果的に三振になったり、ここは落としてみようと落としたら三振になった。それだけです」
“結果的に三振”は、たまたまではない。
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山崎はずっと「僕には決め球がない」と言い続けていた。昨年の秋季キャンプでも、同学年の宇田川優希のフォークを例に挙げながらこう語っていた。
「ウダみたいな、あんなフォークは無理ですけど、ああいうふうに決められたら……。そういうものが欲しいですね。永遠のテーマです」
磨き続けてものにした「決め球」
今年、不調の中でもコツコツと磨き続けてきたフォークが今、決め球となっている。
9月20、21日のソフトバンク戦では、ストレートとフォークの2球種しか使わなかったが、打者は明らかに迷っていた。小さな変化でストライクゾーンに決まるフォークと、低く落ちるフォークを効果的に使い分け、1人目の打者だった海野からフォークで空振り三振を奪ったのが効いた。
これまでの山崎なら、ここぞという場面で打者はストレートに絞って待っていた。だが今回は、ストレートを見逃したり、振り遅れて三振していた。打者の頭にフォークがよぎっていたのは明らかだ。
「全然反応が違うなって、投げていて思いました。今までだったら、僕の時は基本、ゾーンのまっすぐに絞られて、1、2、3で振ってきていたんですけど。フォークがだいぶでかいのかなと」

