「一度だけ、僕の一言に比嘉公也がキレて…」沖縄尚学高監督の知られざる大学時代…プロになった先輩の感謝「“あのこと”がなければ今の僕はない」 

　選手から指導者へ。

　その道を進もうとしたのは比嘉だけではなかった。木村と同期で、比嘉の1つ上にあたる半田真一はチームの主務として汗をかいていた。彼には後に、母校・市立和歌山高校に戻って指導者となり、甲子園の常連校にしていくストーリーが待っている。

　木村は半田のことを親しみを込め「半ちゃん」と呼ぶ。

ADVERTISEMENT

「半ちゃんからも高校に戻って指導者になるとは聞いていて、今思うと2人とも主務、学生コーチと立場は違えども、その目線でチームを見ていましたよね。野球自体は僕のほうがうまかったとしても、彼らは全体的に見えている。まああのときの僕は、大事なところが見えていない。そんなときに“あのこと”だったんです」

キャプテン木村に比嘉がキレた——!?

木村昇吾　©Shiro Miyake

　1年時からずっとレギュラーを張るキャプテンが、チームでも絶対的な存在であったことは言うまでもない。愛知大学野球で毎年、春秋優勝を続けており、自分が引っ張っていかなきゃいけないという気持ちばかりが先行していた。

「バッティング練習で何球打ったとか、自己申告をしなきゃいけない。僕は毎日、トップじゃないといけないと思って大体1000球は打っていました。4年生は時間があるというのもあるんですが、自分が一番やっているってことを示したかった。そういう自分だったからピリついていて、（周りに対しても）視野が狭くなっていたところは正直ありました」

　木村にとって最後の秋季リーグの開幕前に、“あのこと”が起こる。

　キャプテンの一言にキレたのはほかでもない、学生コーチで後輩の比嘉であった――。

〈つづく〉