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世界陸上PRESSBACK NUMBER
「むりやり手を入れてきたり」世界陸上マラソンで箱根駅伝経験者が苦しんだ意外なワケ…「実力不足」だけでない日本マラソンの“弊害”とは
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/09/17 11:06
近藤亮太は2度目のマラソンに着実なレース運びで11位の健闘を見せたが、収穫とともに多くの課題も見えた
アフリカ勢苦戦のチャンスを生かせなかったわけは?
両国の選手が世界陸上でいずれもメダルを獲得できなかったのは2005年ヘルシンキ大会以来20年ぶりだ。この時、尾方剛が3位に入ったが、裏を返せば今回、日本人にも勝つチャンスがあったということだ。タイムレースではスピードで勝るアフリカ勢に勝つのは難しいが、高温多湿の厳しいコンディション下では何が起こるか分からない。だからこそ、狙えるレースだったが、そのチャンスをものにする力が足りなかった。
吉田は「実力不足を実感した」と言ったが、彼らだけに責任があるのだろうか。箱根では、前の選手に追いつくために突っ込み、最後は耐える展開になることが多く、それが選手の力を引き出すことにも繋がっている。
だが、今の日本のマラソンは、ペーサーがついて安定してタイムを出せるようにマネジメントされているケースが多い。そのため、世界大会のように数キロ単位で波のようなペース変化を起こし、集団を削っていくレースに日本のランナーが対応できなくなっているのではないか。勝負強さよりもタイム狙いの弊害が出ているというと、言い過ぎだろうか。
「箱根から世界へ」はまだ道半ば
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箱根から世界に飛び出してはいる。だが、まだまだ戦えていない。最後まで戦うためには、42キロを耐えて勝負できる足を作り、レースで力を使わない走りを徹底する、給水の取り方を考えるなど、細部を詰めてベースを押さえ、世界で場数を踏むことだろう。
当たり前のことだが、世界を知るには世界に出るしかないのだ。
〈全2回/1回目から読む〉

