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世界陸上PRESSBACK NUMBER
「むりやり手を入れてきたり」世界陸上マラソンで箱根駅伝経験者が苦しんだ意外なワケ…「実力不足」だけでない日本マラソンの“弊害”とは
posted2025/09/17 11:06
近藤亮太は2度目のマラソンに着実なレース運びで11位の健闘を見せたが、収穫とともに多くの課題も見えた
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph by
Kiichi Matsumoto
世界陸上東京大会の男子マラソン。箱根駅伝経験者の吉田祐也と近藤亮太が感じた、国内レースと世界の争いの違いとは。本人たちの談話からひもといた。〈全2回の2回目/はじめから読む〉
世界陸上男子マラソン、34位に終わった吉田祐也が国内レースとの差を感じた部分とはどこだったのか。
「力不足もありますが、一番違いを感じたのは、給水です」
世界の給水はバトルだった
国内レースは、基本的に日本人同士、助け合いの精神が働き、給水が取れない場合には譲り受けたり、渡したりする。競い合うなかに礼儀や謙譲の精神がある。箱根では給水員を走者が指定し、並走して丁寧に渡してくれる。
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だが国際大会での給水場は、バトルだ。交錯しそうになった時、「待ってくれる」「先を譲る」という意識はない。バルセロナ五輪で谷口浩美が転倒し、「こけちゃいました」と名言を発したが、事件が起きたのが“給水場”だった。
「給水では、接触したり、ブレーキをかけたり、横からむりやり手を入れてきたり、国外では当たり前のことに対して、落ち着いて対応できなかった」
給水をきっかけにメンタルまで削られた
給水場でのストレスに加え、暑さの残るコンディション下で、給水が摂れないとどうしようという不安が出てくる。それが、何度も繰り返されるペースのアップダウンとあいまって、冷静に走ろうとする吉田の足とメンタルを削っていった。実際、吉田は「自分のなかで気持ちの面で慌てたというか、冷静さに欠けていたのかな」と、自己分析している。
箱根の4区を勝ち取った時のように今回も「練習の虫」となり、「努力」を重ねてきたが、結果は出なかった。
では、この先、どうすべきか。

