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「むりやり手を入れてきたり」世界陸上マラソンで箱根駅伝経験者が苦しんだ意外なワケ…「実力不足」だけでない日本マラソンの“弊害”とは 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2025/09/17 11:06

「むりやり手を入れてきたり」世界陸上マラソンで箱根駅伝経験者が苦しんだ意外なワケ…「実力不足」だけでない日本マラソンの“弊害”とは<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

近藤亮太は2度目のマラソンに着実なレース運びで11位の健闘を見せたが、収穫とともに多くの課題も見えた

 尊敬する大迫傑の凄さについて語ったところにヒントがあるのではないだろうか。

「一人で練習していたこともそうですし、経験値の部分で自分より遥かに上なんだなっていうのを改めて感じました。そこに追いつくために、少し自分の中で気持ちを整理して、もう1回考えていきたいと思います」 

 大迫と練習をともにした後、東京五輪を見て、「あれだけやった大迫さんが6位でショックだったが、同時にあれだけやれば大迫さんのところにいける」と思った。そのことを愚直にトレースして、挑戦してみるべきではないか。それが「今回、あれだけやってきたのに課題が分からない」という絶望を感じた中の光になるように思える。

近藤も感じていた給水の難しさ

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 吉田と同じく、順大時代、1度しか箱根を走れなかった近藤亮太は、難しいといわれる2度目のマラソンのジンクスを破る走りを見せた。

 面白かったのは、給水の難しさを近藤も感じていたことだ。

「給水のところが混戦になるのですごく難しかったです。何回か取れないところがあったので、そこを徹底して一つ一つ取りに行ったんですけど、そこで離れて追いついて、離れて追いついてっていう感じで力を使ってしまいました」

 近藤は、三菱重工マラソン部所属だ。その名の通り、マラソンで勝つためのチームで、所属選手には井上大仁、山下一貴らがおり、マラソン選手の育成、強化に定評がある。実際、今回も代表権を勝ち取った大阪マラソン以降、そのメソッドに沿って練習をしてきた。

「黒木(純)総監督からは『これまでの6回チームから代表を出した中で、一番スムーズに練習ができた、しっかり準備ができた』という言葉をいただきました。監督は『40キロから仕掛けろ』と言っていたので、そこまではいけるんだなっていう自信はありました」

 まだ2回目のマラソンゆえに、黒木総監督の指導の下、必要なこと、自分に合うことをうまく調整し、自信を持ってスタートラインに立った。

【次ページ】 プラン通りに落ち着いてペースを保った近藤

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