現役東大生が“井上尚弥”を研究？ パリ五輪監督も絶賛…元テニス部の秀才が後楽園ホールで衝撃KO「“いまだ無敗”東大理系ボクサーの意外な経歴」 

　テニス部時代を知る昔の友人たちは、伊藤の大胆な転身に目を丸くしている。ボクシングの試合映像を見せても、興味を示してもらえることはほとんどない。「ボクシングって、何」って。それでも、バイクレーサーになるために1年間の休学を許してくれた寛容な両親は「いいじゃん」と応援してくれている。今夏からは東大ボクシング部のキャプテンに就任。いまや学生生活を送る上でボクシングはなくてはならないものになっている。

　ただ、将来のビジョンはリングの世界とは別にある。3年生からは工学部物理工学科で、大きな可能性を秘めた量子コンピューターなどの研究を進めていく。入学前はバイクの開発者を目指していたが、大学で視野が広がった。部活に注力するのは学士を取得する4年生まで。その後は大学院に進む予定だ。区切りがあるからこそ、ボクシングにも全力で打ち込める。

「来年の目標は3部トーナメントで2連覇すること。過去に東大で2人（阿部佳則、幸村琢）だけ2連覇したOBがいるので、まずはその方たちに肩を並べられるように頑張ります。『いまだ無敗の～』って響きもかっこいいですし、できるだけ勝ち続けたいですね」

©︎Nanae Suzuki

　蒸し暑さが一段と増してきた昼時の東大ボクシング場で伊藤が静かに話していると、入口付近から大きな声が聞こえてきた。「この子はセンスがあるんですよ」。ワイルドなヒゲを生やし、ボクサー然としている男は活力に満ちあふれている。毎週土曜日を中心に道場に訪れるOBで、伊藤ら後輩を指導しているという。かつて弁護士ボクサーとして話題になった元A級プロボクサーである。〈第3回に続く〉

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