井上尚弥は「何が凄かったのか？」元世界王者・飯田覚士がフルトン戦を徹底解剖！「もう見切ったんだな、と」「完璧なスタートだったが…」

井上尚弥の何が凄かったのか…

「相手が強くなきゃ実力以上のもんは出ない」

　永遠のバスケット漫画「スラムダンク」で桜木花道の試合を見守る親友・水戸洋平が語った言葉がふと思い出された。元WBA世界スーパーフライ級王者、飯田覚士氏の「解説」を聞き終わった後のことだ。

　確かに井上尚弥は強かった。そしてまたわざわざ敵地まで乗り込んだスーパーバンタム級2団体世界王者スティーブン・フルトンもさすがだった。

　7月25日、東京・有明アリーナ。

　リーチ差をものともせず1ラウンドからジャブの差し合いに勝ち、エネルギッシュに拳をふるう井上、それでもギリギリのところでクリーンヒットを許さないフルトン。劣勢だった王者が7ラウンドに初めてジャッジ3者から支持を集め、判定まで長引くかと思った矢先の8ラウンドで、井上は左ボディーストレートから飛び込んだ右でぐらつかせ、素早い寄せから放った左フックでダウンを奪う。立ち上がったところをコーナーに追い詰めてラッシュし、TKO勝利をもぎ取っている。

フルトンに8回TKO勝利し、ガッツポーズを作った井上　©Takuya Sugiyama

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　井上の凄さが十二分に伝わってくる試合ではあった。ただ井上の序盤KO勝利まで感じさせた一戦が、一転して判定まで行くかもなと変化したこちらの“心変わり”を、モンスターが一瞬にして打ち砕いた流れが、試合後の両者の会見を聞いてもなかなか自分のなかで一本の線につながっていかない。凄かった試合の「何が凄かった」のかが、今ひとつ紐解けていない感じがあった。

井上尚弥とフルトンは「真逆に近い」タイプ

　海外のボクシングに精通し、フルトンの直近の試合をWOWOW「エキサイトマッチ」で解説している飯田氏ならばこの難問を解いてくれると思い、アポイントを取って試合翌日に東京・中野区にある「飯田覚士ボクシング塾ボックスファイ」を訪ねた。フルトンが強かったからこそ、井上の強さがより引き出されたことがよく理解できた。

井上尚弥vsフルトン戦を徹底解説してくれた元世界王者の飯田覚士氏　©︎Toshio Ninomiya

　飯田の解説のもと、あらためて試合を振り返ってみたい――。

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