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「東大でボクシング始めました」理科一類に現役合格、進学校のテニス部だった秀才はなぜリングに? 23年ぶりの優勝「東大理系ボクサー“衝撃KO”の真相」
posted2025/09/18 11:02
東大ボクシング部で主将を務める伊藤朝樹(2年)。大学で競技を始めたにもかかわらず、関東大学3部リーグの優勝を果たした
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Nanae Suzuki
アマチュアボクシングのリングでは珍しい豪快なKO劇――。関東大学3部トーナメント、頂点に立ったのは競技を始めて間もない東大生だった。3部とはいえ、対戦相手には名門高を卒業したエリートたちがズラリと名を連ねる。快挙を達成した、東大理系ボクサーの強さの秘密に迫った。【NumberWebインタビュー全3回の1回目/第2回、第3回も公開中】
元世界チャンピオンの村田諒太(東洋大)、内山高志(拓殖大)、山中慎介(専修大)らを輩出した関東大学ボクシングリーグ・トーナメントの表彰式。冷房がよく効いた夏の後楽園ホールには、大学生の熱気が充満していた。プロや五輪で世界一を目指すアマチュアエリートがリングにズラリと並ぶなか、舞台下から大きな声が飛んだ。
「伊藤くん、おめでとう」
声の主はパリ五輪で日本代表コーチを務め、関東1部で2連覇を果たした駒澤大学の小山田裕二監督である。キャンバスの上では見慣れない白と紺のジャージに身を包んだ聡明そうな細身の学生が照れ笑いを浮かべて、小さく会釈していた。
東大現役合格の秀才がなぜボクシングを?
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現在、20歳の“伊藤くん”がボクシングを始めたのは2年前の春だった。千葉県指折りの進学校で知られる市川高校から東京大学の理科一類に現役で合格。新入生でごった返す駒場キャンパスの新歓イベントでは、テントの列から勧誘のビラを数多く持ち帰った。仲の良い学友と興味のあるサークルと部活を選別していくなか、目に留まったのがボクシング部。
「友達が『ダイエットして、女の子にモテたい』と言うので、なんか楽しそうだし、僕も体験入部について行ったんです」

