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現役東大生が“井上尚弥”を研究? パリ五輪監督も絶賛…元テニス部の秀才が後楽園ホールで衝撃KO「“いまだ無敗”東大理系ボクサーの意外な経歴」
posted2025/09/18 11:03
関東大学3部トーナメント・ライト級でチャンピオンになった伊藤朝樹(2年)。東大ボクシング部として23年ぶりの快挙だった
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杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Nanae Suzuki
デビュー戦の勝利から1年3カ月後。競技歴2年の東大理系ボクサーは、選手として初めて後楽園ホールに足を踏み入れた。2025年7月12日、関東3部トーナメントのライト級(60kg以下)決勝。当日の朝、伊藤朝樹はまだ誰もいない会場に入ると、がらんとした客席を見渡し、「ここで試合をするのか」としみじみ感じた。
いざ入場するときには客席は埋まっていたが、ほとんど緊張しなかった。トーナメント初戦の東海大戦でヒザが震えていたのが嘘のよう。準決勝の防衛大戦といずれも1ラウンドRSC(レフェリーストップコンテスト)勝ちを収め、自らつかんだチャンスだ。大舞台にゆっくり上がり、“聖地”の光景を目にしっかり焼き付けた。
「リングに上がる直前のお客さんの視線をよく覚えています。みんな、僕を見ているんですよ。ここは主役にならざるを得ない場所なんだな、と。試合を楽しもうって。来年、再来年はどうなるか、分かりませんから。このリングに立てるだけで、すごく幸運なことだなと」
運命の決勝戦「もう終わった…」
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決勝で拳を交える立教大の選手は、これまでにない強敵。東福岡高時代にインターハイに出場した経験を持つボクシングエリートである。いざ開始のゴングが鳴ると、すぐに実力差を感じた。サウスポー同士で右ジャブの差し合いになるが、スピードと技術のレベルは相手が一段上。1回の序盤に左ストレートでスタンディングダウンを奪われ、そのあとにも被弾してレフェリーが両者の間にすっと割って入る。
「あのときは、もう試合が終わったのか、と思いました。あれがオープンブローの注意だったので、ほっとしましたね。本当にひやっとして、ギリギリで試合が続いたぞって」

