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復活の秘訣「ラブブ人形とスマイル」「ウィナーを狙わなくてもいい」で全米4強!? 大坂なおみ“ニュースタイル”で見えた「ママでも四大大会優勝」
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山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2025/09/11 11:02
大坂は決勝戦まで7試合ぶんのラブブを用意していたという。こちらは4回戦の「Althea Glitterson」ちゃん。お披露目できなかった決勝のラブブとは……?
「トマーシュはプレースメントの話をよくするの。いつもウィナーを狙わなくてもいいんだって」
それは確かにこの夏の大坂の戦い方だった。強打一辺倒ではなくコースを重視して相手を追い込み、守勢でも根気強くボールを返して流れを変える。サーブのちょっとした修正やリターンのポジショニングなど、ビクトロフスキの助言は確かに効いていた。思いがけないショットの選択を教えてくれたり、忘れていた戦術パターンも思い出させてくれたという。
前コーチと積み重ねていた努力
ただ、その実践を可能にしたのは、苦しかった復帰後の日々の蓄積だろう。特に今年のクレーコート・シーズンはその蓄積の多くを成していた。1戦目のマドリッドで初戦敗退を喫したあと、フランスの港町サン・マロでツアー下部大会の『WTA125』に出場したのはムラトグルーの提案だった。そのレベルの大会に出場したのは10年近くも前、まだ100位を切る前のことだ。
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「私にとっては勇気のいる決断だった。だってやっぱりプライドみたいなものがあるし、負けられないというプレッシャーも怖かった。でもパトリックの言う通り、行ってよかった。乗り越えることができてうれしかった」
100位以下の対戦相手ばかりだったとはいえ、そこでキャリア初のクレーコートのタイトルを手にした。その経験は全仏オープンやウィンブルドンの結果にすぐにはつながらなかったが、クレーコート・テニスの本場フランスのニースに大スケールのアカデミーを持つムラトグルーは、アグレッシブな強打が持ち味の大坂の動きを改善し、ディフェンスの向上を目指したという。

