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復活の秘訣「ラブブ人形とスマイル」「ウィナーを狙わなくてもいい」で全米4強!? 大坂なおみ“ニュースタイル”で見えた「ママでも四大大会優勝」
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山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2025/09/11 11:02
大坂は決勝戦まで7試合ぶんのラブブを用意していたという。こちらは4回戦の「Althea Glitterson」ちゃん。お披露目できなかった決勝のラブブとは……?
「GSベスト8に行けば必ず優勝」は崩れたが……
その取り組みと、新コーチから得るインスピレーションが噛み合い、大坂自身が本来持つ旺盛なチャレンジ精神や大舞台での強さが発揮され、完全復活の道はゴールが見えた。しかし準決勝、ウィンブルドンで準優勝したアマンダ・アニシモワの強打の前に倒れ、2021年全豪以来のグランドスラム制覇はならず、準々決勝以降の無敗神話も崩れた。
試合後の大坂に涙はなかった。
「正直、悲しくはないの。不思議だけど、それは力を出し切ったからなんだと考えれば、不思議なことじゃないのかも」
「ママでもGS優勝」の可能性は?
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どんな質問にも冷静に答えていたが、決勝のために用意していたはずのラブブについて聞かれたときだけは、咄嗟に「お願い、泣かせないで」と言って小さくため息をつき、悔しさを吐露した。
「その質問が一番つらい。負けたことはもういいけれど、それだけはもうほんと最悪……」
一番見せたかったトリのラブブは、話題沸騰となった昨年の巨大リボンのウェアを着た大坂自身だったという。ストーリーはできていた。完結しなかったが、この自己演出力、独特の感性は、大坂のテニスの進化と結びついているに違いない。
心残りに苛まれて去ったニューヨークで、最後に笑ったのは女王アリーナ・サバレンカだった。これで今年のグランドスラム・チャンピオンは異なる4人の顔が並んだ。激化する女子テニスのトップ争いに大坂が戻ってくれば、高揚感はなお高まる。あのセリーナも果たせなかった「母としてのグランドスラム優勝」へ、埋もれかけていた可能性がきらめき出した。

