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強すぎた阪神優勝のウラで…「どっちが勝つ?」日本ハムvsソフトバンク“じつは真逆だった”新庄剛志と小久保裕紀の采配「近藤健介に“1試合3敬遠”も」
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph bySankei Shimbun
posted2025/09/09 06:00
パ・リーグの優勝戦線は大詰めに。ソフトバンクと日本ハム、今季の激闘を振り返る
日本ハム・新庄剛志監督の独創的なタクトはたびたび話題になる。8月下旬の真夏の天王山では、高卒ルーキーの柴田獅子の先発登板を匂わせ、結果的にリリーフ登板だったが2回2/3を1失点の好救援。経験のない若手でも臆することなく送り出す。5月22日の直接対決でも、3―3同点の9回表にこの日支配下登録されたばかりの孫易磊(スン・イーレイ)をマウンドに送った。台湾生まれの20歳右腕を延長に入っても回またぎをさせて、2回1安打無失点の快投。あの大胆起用も驚くばかりだった。
また、8月24日の試合ではチャンスで回ってきたソフトバンク・近藤健介を3度申告敬遠で歩かせるという策に出て、これを見事的中させている。
そして先発オーダーが多種多様なのは、もはやお馴染みである。
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それについて、ソフトバンク・小久保裕紀監督が前半戦終了時にこのように言及していた。
「新庄監督はオーダーをいくつも用意して、たとえばクイックが遅い投手ならばレイエスや清宮を外して足を使える選手を起用するなど幅広い戦いをしている。そのあたりにも日本ハムの強さを感じます」
故障者続出も…やはり強かったホークス
一方、その小久保ソフトバンクが好む野球は、いわば「王道」スタイルだ。
現役時代はスラッガーで鳴らした小久保監督だが、チームを率いる立場となってからは「野球はピッチャー。バッテリーで守り勝つ」と断言。また、ソフトバンクが常勝軍団と呼ばれるようになって以降、頂点に立つシーズンでは必ず優秀なリリーバーたちがチームの屋台骨になってきた。
今季も6月に藤井皓哉、松本裕樹、杉山一樹の7、8、9回必勝リレーを確立させたことがチーム好転の要因の1つになった。ソフトバンクは6回終了時にリードしていた場合、60勝4敗(勝率.938)と高い勝率を誇っており、上記の必勝リレーを確立させた以降は一度も負けていない。
しかし、攻撃陣については故障者がこれでもかと続出し、加えて昨季本塁打王と打点王の二冠に輝いた山川穂高の不振もあって苦労の絶えないシーズンとなっている。どうにかして持ち前の層の厚さで乗り切った感もあるが、「オーダーは固定が理想」と言い切る小久保監督が泰然自若の構えを崩さなかったことが大きい。
理想と現実の区別が上手かった。

