甲子園の風BACK NUMBER
日本代表になった末吉良丞と対戦「沖縄尚学メンバーの本音」…比嘉公也監督「厄介だな」宜野座恵夢「捕手目線と全然違う」現地沖縄で見た“お祭り”ウラ側
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松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph byTakarin Matsunaga
posted2025/09/04 11:15
U-18日本代表の一員として沖縄に「凱旋」した末吉良丞。壮行試合では沖縄尚学メンバーとの対戦が実現した
甲子園で526球を投げた末吉良丞…懸念も
入場者数1万7969人。毎年5月から7月にかけてプロ野球のカードが沖縄セルラースタジアム那覇で組まれるが、アマチュアの試合では見たことがないほどの大入りだった。
観客たちは知っていた。これがただの壮行試合ではなく、沖縄尚学の選手を中心とした沖縄選抜が、日本代表と全力でぶつかり合う「甲子園の延長戦」であることを。それもあの末吉を敵に回して、だ。それは見方を少し変えれば、大人たちにとって都合のいい“興行”だった。
決勝までの6試合で34イニング、526球を投げた末吉が、甲子園後初めての実戦マウンドでどのようなピッチングをするのかが注目された。肩肘やメンタルなどの疲労がどれだけ蓄積されているのかも懸念点だった。あの大観衆の前で投げ続け、あらゆる面で極限状態にまで追い込まれながら最高の結果を残したのだ。1カ月近くの長期滞在も含めて相当な消耗があったはずで、10代の若さとはいえ、たかだか10日ほどで芯に残った疲労が取り切れるはずがない。
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沖縄に戻ってきてもテレビ各局の生放送による特番に出演するなど気を休める暇もなく、そのまま8月28日に代表合宿へと突入した。
それゆえに末吉の先発に対して、個人的にはピッチングの内容云々よりも不安のほうが先走った。ケガだけは避けてくれと祈るような思いで観ていたが、それは杞憂に終わった。
一方、比嘉公也監督が率いる沖縄選抜は、スタメンにピッチャーの新垣を含め沖縄尚学のメンバーを6人並べた。
末吉良丞vs沖縄尚学打線「練習時とのギャップが…」
プレイボールがかかり、満員のスタンドの熱狂はさっそく最高潮に達する。
1回の初球、末吉は沖縄県大会の決勝でも対戦したエナジックスポーツのイーマン琉海に甘い真っ直ぐを狙われ、レフト前ヒットを許す。次打者の沖縄尚学主将・眞喜志拓斗が送りバントを決めて1死二塁。得点圏にランナーを置いて、さらに3番、4番と沖縄尚学の先輩が続く。
だが、DHの比嘉大登は1ボール2ストライクから、スプリットで空振り三振。さらにバッテリーを組んでいた4番・宜野座恵夢には3球勝負を挑み、外角の142kmの真っ直ぐで空振り三振。二度と見られない“夢の同門対決”にスタジアムは揺れた。
対戦した宜野座はこう話す。


