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「ニッポンは高校野球の国。嫉妬する」「マンマミーア!」イタリアU-18監督が思わず放送禁止用語「ぼ、暴力?」広陵問題など日本人記者が聞いた 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byHideki Sugiyama

posted2025/09/01 17:02

「ニッポンは高校野球の国。嫉妬する」「マンマミーア!」イタリアU-18監督が思わず放送禁止用語「ぼ、暴力?」広陵問題など日本人記者が聞いた<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

大観衆とメディアが詰めかける夏の甲子園。イタリアの育成年代の野球指導者にとって、理解の範囲外だらけのようだ

 衝撃のあまり放心してしまったのか、放送禁止用語をつぶやき、呆れたと言わんばかりだ。いささか古いデータだが、イタリアにおける2014年度の16~18歳登録選手数は5465人だった。同時期(平成26年)の日本の同世代データで比較すれば、両国の差は約31倍に及ぶ。

 2023年のWBC準々決勝では実際に対戦するなど――日本野球が国際舞台に強いのは知っていた。だが、その競争力の源が、絶望的な競技人口差と絶え間ないトーナメントによる勝ち抜き絶対主義にあることを突きつけられた監督は強いショックを受けていた。

「まったくもってうらやましいとしか言いようがない。日本の高校球界はイタリアに比べれば夢のように素晴らしいじゃないか! それだけ競技人口が多く試合数もこなせれば、強くなるのは道理だ」

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 監督は興奮した口調でまくし立てた。野球黄金郷のような国の球児たちとワールドカップの舞台で勝負できるとは本当に光栄だ、とくりかえし強調した。むしろ発奮して、闘志をかき立たせているようにも見えた。

「我々は厳しいグループに入った。日本に0-100で大敗するかもしれない。もしかしたら全敗するかもしれない。それでもイタリアの選手たちが大舞台に気後れすることなく、堂々と立ち向かい全力を尽くしてくれることを願っている」

広陵問題を聞いて狼狽したワケ

 取材の終わりに、貴方は野球の指導者であるとともにベテランの教育者でもありますね、と問いかけた。「もちろんだとも」とトリンチ監督は胸を張った。

「近年、イタリアのスポーツ界は少年少女への指導や扱いについて、指導者により厳しい自覚と法遵守を求めるようになっている。私も新たに指導者講習を受けた」

 EU法改正の流れを受け、2023年からイタリアスポーツ界では暴力からの保護について改革が急速に進んでいる。クラブやチーム内での未成年への暴力や虐待、搾取を罰する法整備が進み、育成組織をもつクラブや組織、各競技連盟には匿名の第三者による通報フォーマットの設置がほぼ義務づけられた。スポーツ界の中の暴力に社会から厳しい目が注がれる。

【次ページ】 マンマミーア! すると彼らは…

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