甲子園の風BACK NUMBER
「ニッポンは高校野球の国。嫉妬する」「マンマミーア!」イタリアU-18監督が思わず放送禁止用語「ぼ、暴力?」広陵問題など日本人記者が聞いた
posted2025/09/01 17:02
大観衆とメディアが詰めかける夏の甲子園。イタリアの育成年代の野球指導者にとって、理解の範囲外だらけのようだ
text by

弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Hideki Sugiyama
野球の国ニッポンに嫉妬するよ
「日本の高校生選手はイタリアの同年代に比べ、2万倍は優れているだろう。日本の高校球界の関係者全員にキスしたいくらいだ。尊敬するしかない。私は野球の国である日本に嫉妬するよ」
U-18イタリア代表監督グリエルモ・トリンチは、日本の高校球界について最大級の敬意を示した。
日本とのWBSCワールドカップ開幕戦を9月5日に控え、「だが我々も世界の舞台で恥ずかしくない戦いができるよう準備を進めてきた」と熱弁を振るう。
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イタリア代表は、昨年夏のU-18欧州選手権を制したチームからメンバーの大半が入れ替わって、ほぼ別物になっている。来年以降の代表強化を見据え、08年組や09年組を加えたチーム編成にはある程度満足しているという指揮官だが――懸念もある。
「何人かの選手たちは出発直前の8月31日まで、所属するセリエAやセリエBのクラブチームで(主にベンチ要員として)プレーオフなどに参加し続けなければならない。代表集合日は9月1日で、日本への出発は翌2日早朝の予定だ。つまり直前の最終合宿をすることができず、大会にはぶっつけ本番で挑むことになる」
育成年代を率いてほぼ四半世紀、66歳のトリンチ監督に若者の変化を尋ねる。イタリアの高校生選手は昔と比べてどう変わりましたか。
「イタリアでもソーシャル世代の指導は骨が折れる。20年前の高校生はコーチの言うことにより耳を傾けていた。今どきの16歳は、コーチから『ブラーヴォ(いいぞ)』とひと言褒めてもらうと、自分はうまいと尊大になり、それ以上努力しなくなる。よし、もっと努力してより上手くなろう、とは考えない。耳触りのいい言葉しか覚えようとしないから、別の指導者からミスを指摘されると逆上する。だから私は高校生年代の選手には、甘い言葉をなるだけかけないようにしている」
“じつは群雄割拠”ヨーロッパの野球事情
今どきの若者は――と嘆く監督だが、悲壮感はない。むしろ豪快な口ぶりで、イタリア高校球界には温故知新が必要だと熱っぽく訴える。
今世紀に入り、欧州ベースボール界の情勢は大きく様変わりした。

