甲子園の風BACK NUMBER
「ニッポンは高校野球の国。嫉妬する」「マンマミーア!」イタリアU-18監督が思わず放送禁止用語「ぼ、暴力?」広陵問題など日本人記者が聞いた
text by

弓削高志Takashi Yuge
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/09/01 17:02
大観衆とメディアが詰めかける夏の甲子園。イタリアの育成年代の野球指導者にとって、理解の範囲外だらけのようだ
90年代まではイタリアとオランダが欧州の2トップとされ、南米からの帰化選手を重用したスペインが続く形で3強が形成されていた。WBSC(世界野球ソフトボール連盟)の最新世界ランキング(8月5日時点)でも、8位オランダ(9位)と14位イタリアは大陸別ランクで上位にあるものの、そのすぐ背後には新興国の15位チェコや17位イギリス、18位ドイツが迫る。ヨーロッパ野球界は群雄割拠の時代に入った。
代表活動の傍ら視察を重ねてきたトリンチ監督によれば、ドイツやチェコの台頭は積極的なインフラ投資によるものが大きいという。両国のクラブチームが屋根付き練習場や地下トレーニング施設を整備し、アカデミーを充実させたことでやる気のある人材が集まり、成果が出始めた。もちろんイタリア球界も手をこまねいているわけではなく、国内北部を中心に施設投資は少しずつだが進んでいるようだ。
コウシエン? 一体何なのだ?
母語での取材に気をよくしたトリンチ監督との取材はざっくばらんに進んだ。監督はどこか中畑清氏(元横浜DeNAベイスターズ監督)を思い起こさせる明朗な人物で、笑い声を絶やさない快活な人柄が選手たちに慕われる理由だろう。日本の高校球児についての印象を問うと、さすが熟達者らしい表現を使った。
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「彼らのプレーは優雅でエレガントなんだよ。見てるだけで惚れ惚れする」
監督は日本の高校球界についての質問を矢継ぎ早に投げかけてきた。
どれだけ練習を重ねれば、あれほど練度の高いプレーができるのか。
なぜ選手たちは厳しい練習に耐え続けられるのか。
モチベーションはどこからくるのか。
コウシエン? 聞いたことはあるが「コウシエン」とは一体何なのだ?
日本の高校球界がどう組織され、どの規模の選手たちが一心不乱に頂点を目指すのか、1万キロ離れたイタリアで具体的な情報は得難い。これ幸いと思ったのか、監督は筆者を質問攻めにした。できるだけ簡潔に、客観的事実を列挙して説明を試みた。
ニッポンに0-100で負けるかもしれないが
学校が管理運営する「部活動」というものがあること。主な活動目標は季節ごとに開催されるトーナメント大会で、最大のものが100年を越す歴史ある全国選手権、通称「コウシエン」であること。今年の予選には全国で3680校が参加し、地区予選を勝ち抜いた49チームが集結し、8月の炎天下に連日万単位の観客を集め、全試合が地上波で生中継されることなどを説明した。
今年度の日本の16~18歳競技登録者数は約12万5000人ですと伝えたとき、ついに監督は吹き出した。

