甲子園の風BACK NUMBER
「コウシエン見てます。ホークスも最高」イタリア高校球児と名将に聞く“野球後進国”のホンネ「我々はスパゲティとサッカーだけではない」
posted2025/09/01 17:01
日本にルーツを持つイタリアの高校球児、ルポ拓真に聞いた「コウシエン、ニッポン野球」への印象とは
text by

弓削高志Takashi Yuge
photograph by
NumberWeb(家族提供)
コウシエン…今年もテレビで見ていました
「一番好きなアニメはワンピース。でも『MAJOR』や『ダイヤのA』も観ましたよ」
この秋からフィレンツェ市内の技術系高校で3年生に進級するルポ拓真は、野球クラブ「フィオレンティーナ」のU-18チームで投げる190cmの大型右腕だ。
昨年のU-15世界選手権コロンビア大会ではイタリア代表として好投し、初夏から8月初旬まで続いたU-18代表合宿にも飛び級で招集された。
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合宿参加後、イタリア人の父と日本人の母をもつ彼は、恒例となっている家族旅行で日本を訪れていた。もちろん夏の甲子園をTVで目撃していた。
「甲子園のことは知っていました。今年もTVで試合やハイライトを見ました。高校野球への人びとの熱狂はよくわかります。選手たちが全力を尽くしてプレーする熱意も伝わってきました」
猛暑…イタリアの選手はメンタル的に参ってしまう
盆地のフィレンツェは京都のような蒸し暑さで知られ、今夏も気温が35度を越える猛暑日が続いた。
もし、真夏のイタリアで登板することになったら。
投手であるルポはマウンドでの疲労度に敏感だ。長考した後、落ち着いた口調で答えた。
「この時期、猛暑のイタリアで(高校年代のチームが真剣勝負の)試合をすること自体が困難だと思います。選手の立場でいうと、実力を100%出すには涼しい時期の方が絶対理にかなっている。
イタリアには冷房のあるドーム球場はないし、炎天下ではイタリアの高校生選手はたぶんメンタル的に参ってしまう。実際に試合をしたら、集中力が落ちてプレーが緩慢になるでしょうね。この時期に試合をしても、イタリアでは誰もいい結果を出すことはできないと思います」
ルポ拓真は、イタリア中部トスカーナ州のワイン産地として有名なキャンティ地方で生まれ育った。6歳のときに地元の小さなチームが開いた普及イベントで野球に恋して以来、サッカーの国でグラブとバットを握って育ってきた。

