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「戦力外通告から6年…30歳の今は“部員4人”の野球部監督」“北のイチロー”元オリックス吉田雄人が北海道の田舎町で見つけた希望
posted2025/08/29 11:02
北海道・森高校野球部を率いる吉田雄人監督(30歳)。2014年からオリックスで5年間プレーした
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Noriko Yonemushi
北海道森高校野球部を訪れたのは8月6日。夏の甲子園の開会式が行われた翌日のことだった。
グラウンドは広大だが、外野部分は原っぱと化している。その原っぱの奥にある黒土のグラウンドで、吉田監督と4人の球児たちが汗を流していた。森高野球部は2017年に活動休止、2021年に廃部となっていたが、今春、4年ぶりに活動を再開した。新入部員の4人は復活1期生だ。
監督の吉田は北海道の名門・北照高校出身。俊足巧打の外野手として注目され、「北のイチロー」と評されたこともある。甲子園は3度経験し、高校3年時には森友哉や若月健矢、松井裕樹らと共に高校日本代表にも選ばれワールドカップにも出場。その年、オリックスにドラフト5位で指名された。
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入団会見では「オリックスにいたイチロー選手のような、野球の技術も、人としても素晴らしい人間になっていきたい」と背筋を伸ばした。しかし、プロの世界で安打を打つことの難しさを思い知らされることになる。
プロ通算1安打、23歳で戦力外通告
吉田は練習の虫だった。二軍の試合の後も必ず残って練習し、グラウンドをあとにするのはいつも一番最後。素直で愛嬌があり、先輩やコーチにかわいがられたが、素直さはプロ野球選手としては仇となることがある。指導されたことをすべて真面目に取り入れようとするうちに、自分の打撃を見失った。
「そこも含めてセンスだと思うんです。僕だけじゃなく、みんな大なり小なり(監督やコーチに)言われていたと思う。その中でも、ブレない軸があるとか、チョイスがうまいとか。そこがセンスであり、能力。それが自分にはなかった。だから、言われなきゃよかったなとは思わない。でも、もっと自分を信じればよかったなとは思います」
プロ初安打を放ったのは2018年。8月2日の楽天戦、8番センターで先発出場し、5回裏の第2打席で右腕・美馬学のシュートを弾き返した。
その打席で使用したのは、奇しくも封印していたイチローモデルのバット。プロ5年目でようやく生まれた、まさに待望の1本だった。しかし、試合後の吉田は想像していたほど高揚していなかった。
「嬉しかったというよりは、ほっとした感じです。もう打てないんじゃないかなと思う時期もあったし……」
それが吉田にとって、プロで記録した最初で最後のヒットとなった。その年10月、吉田は戦力外通告を受け、ユニフォームを脱いだ。
もう野球には関わりたくない。そんな境地にいた吉田が、廃部になっていた野球部を復活させるまでの6年半に、いったい何があったのか。本編で詳しく描かれている。〈つづく〉
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この記事の本編は、以下のリンクからお読みいただけます。
