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野ボール横丁BACK NUMBER
部員全員が寮生活でスマホNG…甲子園強豪校の“昔のイメージ”は変わったのか? 公立校“最後の優勝監督”が明かす「タイブレークは格下に有利」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/29 06:01
2007年、夏の甲子園を制した佐賀北。現在に至るまで“最後の公立優勝校”になっている
百﨑 絶対、格下のチームの方が有利ですよ。層の薄いチームは不利だって言われますけど、格下チームにとって何よりありがたいのは投手を休ませられることですから。今年の佐賀北もそうでしたけど、ピッチャーが1枚しかいなかった。公立で全国に通用するピッチャーを2枚そろえるって、本当に大変なんです。DHというと打線の方ばかりに注目がいきがちですけど、昔、プロ野球のオールスターとかで4番バッターを並べたような打線がぜんぜん機能しなかったりしたじゃないですか。打線で大事なのは強打者が何人いるかではなく、役割分担ができているかどうかですから。日本一になったときの佐賀北に重ね合わせても、昨今のルール変更はこちらに有利になっていたと思います。
「監督批判もあった」佐賀北優勝メンバー
――あのときの佐賀北が理想的だったのは、百﨑さんは「強制は必要」と言っていながら、選手たちは強制されているという雰囲気がほとんどなかった点だと思うんです。取材になると、本当に彼らは自由にしゃべってくれて。監督批判とも受け取られかねないようなことまで平気で言っていましたから。だから取材がすごく楽しかった。自分たちの言葉を持っていたという意味では慶應の選手に似ていましたね。
百﨑 スカウトとか大学の監督が来たときに「先生のところは選手が自分たちで考えてやっていますね」と言われるのが、僕にとってのいちばんの褒め言葉だった。
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――内心では、いやいや、自分がそう仕向けているだけなんだよ、と思いつつ?
百﨑 しめしめ、というのはあるよね。そういう方向性は示していましたから。日本一になったときなんて、3回戦あたりからは本当にそんな感じでしたね。こいつら、もう自分たちで勝手にやってるなって。こっちが変なサインとか出したら、絶対ダメだな、と。俺が引っ張るんじゃなくて、後ろからついていって、もし、変なところ行きそうになったら、ちょっと方向修正するぐらいで十分だった。でも、最初はやっぱり強制ですよ。強制する部分がなかったらチームはまとまらないし、強くもならない。トレーニングとかでもこういう練習をしなきゃダメだって思ったら、やらせましたもん。だから、選手たちは僕を恐れていた部分はあると思いますよ。陰では「百﨑のやつは……」って言われていたと思います。
「優勝メンバーと飲まない」
――選手たちは陰ではニックネームで呼んでいたんですよね。

