野ボール横丁BACK NUMBER

「髪型自由化なのに…なぜ丸刈り人気?」佐賀北の甲子園優勝監督が語る“強豪公立野球部の今”「慶応が優勝して…チャラチャラして、と言えなくなった」

posted2025/08/29 06:00

 
「髪型自由化なのに…なぜ丸刈り人気?」佐賀北の甲子園優勝監督が語る“強豪公立野球部の今”「慶応が優勝して…チャラチャラして、と言えなくなった」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

甲子園出場チームは丸刈りが多いが…佐賀北は髪型自由化に踏み切っていた

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

PROFILE

photograph by

Hideki Sugiyama

夏の甲子園で“公立校最後の”優勝校となっている佐賀北。2007年、同チームを率いていた人物が百﨑敏克である。公立校の苦戦、丸刈り、野球人口、タイブレークまで…百﨑氏に話を聞いた。【全2回の1回目/2回目へ】

――この夏、佐賀北は1回戦の青藍泰斗戦で、2007年の決勝以来の勝利を挙げて話題になりました。

百﨑 日本一になったあと、2012年夏、2014年夏、2019年夏と出て、みんな初戦敗退でしたからね。優勝した頃と比べたら部員もだいぶ減りました。あの頃は1学年20人くらい、3学年合わせると60人以上は常にいました。けど、この夏は全学年で37人です。あの佐賀商だって、近年、1学年9人とか10人とかになってびっくりしてたんだけど、うちも今は1年生が10人だから。もう、校内に野球経験者がそれぐらいしかいないんですよ。佐賀県も野球人口の減少は切実ですよ。

選手の髪型バラバラ「自由にするしかない」

――佐賀北の選手の頭髪はバラバラでしたね。丸刈りの選手がいたり、普通の長さの選手がいたり。とても新鮮な感じがしました。

ADVERTISEMENT

百﨑 今の3年生が入ってきた年の秋から自由にしました。いちばん大きかったのは彼らが1年生のときに全国制覇した慶応の影響ですね。あれはインパクトありました。髪の毛を伸ばして頂点に立ったわけだから。どう考えたって野球は髪型じゃないんだなって、これ以上ない形で証明されちゃったわけです。あれから長い髪の毛を見ても「チャラチャラして……」とは言えなくなった。佐賀県内でも、あれから一気に髪型自由のチームが増えた気がします。強豪私学でも。それまでは丸刈りじゃないとどうしても遊び半分というか、適当に野球をやっているように見えちゃってたんですけど。

――地方大会だとずいぶん頭髪自由のチームが増えたなという印象がありますけど、甲子園に出場してくるようなチームになると依然として丸刈りが多いんですよね。

百﨑 髪を伸ばしたから弱くなったとか言われるのが嫌なんですかね。ただ、頭髪を自由にした理由は、髪の毛を強制するのはもはや人権問題にもなるからなんです。なので、今の時代、自由にせざるをえないところがある。たとえば頭に古傷があって、それを気にしている選手が入ってきたとして、その選手にも丸刈りにしろとは人権上、言えないわけです。その選手に丸刈りにしないのなら部の規則なので入部できませんとも言えない。結局、もう選択肢として、自由にするしかないんですよ。ただ、髪の毛を自由にすると選手たちに伝えたときは総スカン状態でしたよ。

髪型自由化も女子マネも…最初は反対意見

――なぜですか? 喜ばないんですか?

【次ページ】 佐賀北の逆転満塁弾…あの選手も監督に

1 2 3 NEXT
#県岐阜商業高校
#藤井潤作
#佐賀北高校
#百﨑敏克
#慶應義塾高校
#副島浩史

高校野球の前後の記事

ページトップ