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酷暑甲子園「継投か続投か問題」169球vs151球完投…悩める両監督の試合後ホンネ「正直変えにくい部分が」県岐阜商は“継投策ズバリ”
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間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/29 17:01
夏の甲子園決勝での沖縄尚学・新垣有絃と末吉良丞。酷暑の中で継投か続投か、どのように判断しているのか
「沖縄尚学さんに勝ったら、次戦は吉川の登板を考えていませんでした。違う投手4人で勝ち上がろうと思っていました。甲子園の日程を前半と後半の2つに分けて前半戦は吉川に任せ、沖縄尚学戦を前半戦のラストと位置付けていました。吉川以外の投手陣には8月15日以降にピークを合わせてほしいと、約3週間前から伝えていました」
この試合、仙台育英は4回表に背番号11の梶井湊斗、9回表には背番号17の刀祢悠有希がブルペンで投球練習を開始している。吉川は序盤に球が高めに浮き、3回までに2点を失っていたことから、須江監督は継投を視野に入れていたという。だが、吉川は中盤以降、スライダーを低めに制球し、速球の球威も衰えなかった。メディカルチェックの結果、コンディションも万全だった。
そこで、指揮官は続投を決めた。
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「吉川の投球は100点、120点、150点、点数では形容できないナイスピッチングでした。中盤以降は守備のミスさえなければ、あまり失点のにおいがしませんでした」
「変えにくい部分が正直ありました」
対する沖縄尚学も、背番号1の末吉が最後までマウンドを守り抜いた。チームを指揮する比嘉公也監督は試合後、「エース同士の投げ合いが、お互いの力を引き出した好ゲームだったと思います」と振り返った。
沖縄尚学のブルペンでは、末吉が5回1死満塁のピンチを招いたタイミングで背番号10の新垣有絃が準備を始めた。比嘉監督は何度も継投を考えたという。
「相手打線に末吉が研究されている感じを受けましたし、球数も気になっていました。ただ、1点を争う試合展開だったので末吉を変えにくい部分が正直ありました。延長12回からは新垣に代えるつもりでしたが、11回で勝負がついたので、結果的には末吉を完投させる形になりました」
末吉は仙台育英戦で169球を投げた。1試合としては異例の球数だが、直近に当たる3日前の鳴門戦は4イニングで62球にとどめている。仙台育英戦の2日後に行われた準々決勝・東洋大姫路戦も3イニングで50球と球数は少ない。
つまり沖縄尚学は新垣との2枚看板で夏の頂点にたどり着いたと言える。
沖縄尚学・新垣→末吉の継投…伏線はセンバツ敗戦に
継投ができるチームに成長した部分が、日本一を成し遂げた最大の要因と言える。沖縄尚学は春のセンバツ2回戦で、横浜に7-8で敗れている。5日前の初戦で末吉が157球を投げていたため、比嘉監督は横浜戦の先発に新垣を起用した。
しかし、新垣は初回に3点を失い、2回から末吉が登板した。

