甲子園の風BACK NUMBER
プロ野球レジェンドも思わず「プロでもあんな守備は見たことがない」…甲子園で好守連発 末吉良丞でも新垣有絃でもない沖縄尚学“職人”の正体とは?
posted2025/08/27 11:03
元ヤクルトの古田敦也氏も大絶賛だった沖縄尚学のサード・安谷屋春空の好守。その好プレーのウラにはどんなトレーニングがあったのか
text by

沢井史Fumi Sawai
photograph by
Sankei Shimbun
甲子園で校歌斉唱する沖縄尚学ナインの中で、1人だけ背中を反りかえらせながら“全力校歌”を貫く選手がいた。
背番号5の安谷屋春空。
準々決勝の東洋大姫路戦まで4番を打ち、攻守でチームをけん引。エースの末吉良丞、右腕の新垣有絃、正捕手の宜野座恵夢らのように、全国制覇の立役者の中ですらすらと名前を挙げる者は少ないかもしれない。だが安谷屋の躍動が詰まった試合はあった。
仙台育英戦で見せた「好守」
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3回戦の仙台育英戦。仙台育英の吉川陽大、沖縄尚学の末吉良丞と両エース左腕の熱のこもった投げ合いとなった一戦だ。
4回の裏。1死三塁のピンチで、仙台育英の5番・和賀颯真の打球が投手ゴロとなり、末吉がいったん三塁に投げたがセーフ。その直後、三塁の安谷屋はすかさず一塁へ送球。瞬時にきれいなスローイングで打者走者をアウトにした。
1点が重たい試合展開の中で、ワンプレーが流れを左右するかもしれない。決して目立ったプレーではなかったが、その安谷屋のプレーに筆者も思わず「おっ!」と声が出てしまった。
試合後、安谷屋は守備についてこんな話をしていた。
「自分は肩がそんなに強くはないんです(遠投は95m)。守備にそこまで自信がある訳ではないんですけど……塁間送球は得意な方だと思います」。
小学校では主に投手。中学時代は三塁手だったが、沖縄尚学に入学してからは一塁手と三塁手を兼任していた。昨秋から三塁のレギュラーとなったが、下級生時から目立っていた訳ではなかった。それでもチームに根付く練習法で守備力を磨いてきた。

