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甲子園の風BACK NUMBER
沖縄尚学の凱旋に密着「比嘉公也監督は意外な表情で…」現地記者が沖縄で見た“甲子園の熱狂”「車が消える」「仕事にならない」ウワサは本当だった
text by

松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph byTakarin Matsunaga
posted2025/08/26 11:07
主将の真喜志拓斗を先頭に沖縄尚学の選手たちが姿を現した瞬間。那覇空港は大歓声に包まれた
その後は背番号順に選手たちが一列になって歩いていく。サードの安谷屋春空は自信たっぷりにニヤつきながら、そして2年生の新垣有絃は余裕すら感じさせる笑みを浮かべるなど、みな一皮むけた顔になって帰ってきた。
ベンチ入りメンバーが空港を出ていくと、半分近くの群衆も一緒になって別のドアから空港を出て、選手たちが乗り込むバスの方へと向かっていった。
東京からやってきた友人が「すげえな、沖縄」
8月23日。決勝戦の朝は、いつになく静謐な空気が漂っていた。沖縄本島全体が静けさに包まれているような気さえした。午前10時から始まる決戦に備えて皆が鼓動を抑え、その時を待っているかのようだ。
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21日の準決勝が終わってから、まず企業が動いた。JTA(日本トランスオーシャン航空)が異例の速さで22~24日に臨時便の増発を決定。さらに那覇空港が「23日は一部入口を朝5時より開放する時間外部分開館を実施します」と発表し、現地へ駆けつけるファンをサポートする協力体制をとった。もはや“神対応”どころではなく、沖縄本島全体が優勝へ向けて一丸になっている。ちなみに増便のチケットはすぐさま完売となり、とにかく内地に行けばなんとかなると思ったのか、福岡や名古屋、羽田便も軒並み満席に。驚くべきことに、ピーチの台湾便を駆使して関西に向かったという話まである。
また浦添市の松本晢治市長は自身のXで注意喚起と題して「沖縄県では明日8/23の10:00から約3時間は電気、水道、ガス以外の全ての社会活動がかなり低下する可能性がございます。特に観光客の皆様はご注意下さい(笑)」と投稿している。県内人口第4位の市の首長が高校野球のことでこのような投稿をする県が、他にあるだろうか。
宮古島に出張していた東京の友人から連絡があった。第一声は「すげえな、沖縄」。話を聞くと、遅延のため宮古空港で時間を潰そうと思ったときに、人集りから大歓声が起きていたという。テレビで準決勝の山梨学院戦が放送されており、同点になった場面だった。
沖縄県代表が大事な試合を戦っている間は、道路から車が消え、街はゴーストタウンになるという都市伝説に嘘偽りはない。現に2010年の興南春夏連覇のときも、道路はガラガラだった。ガソリンスタンドに大音量で試合実況の声が響き渡っていたことが、妙に印象に残っている。今回もガラガラだったかというと、たしかに道路は空いていたが、15年前ほどではなかった。時代は移り変わるものなのかと思っていたが、よくよく見てみるとレンタカーの“わ”や“れ”のナンバーの車ばかりだった。


