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甲子園の風BACK NUMBER
沖縄尚学の凱旋に密着「比嘉公也監督は意外な表情で…」現地記者が沖縄で見た“甲子園の熱狂”「車が消える」「仕事にならない」ウワサは本当だった
posted2025/08/26 11:07
主将の真喜志拓斗を先頭に沖縄尚学の選手たちが姿を現した瞬間。那覇空港は大歓声に包まれた
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松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph by
Takarin Matsunaga
「夏の優勝って15年前にもあったんですか?」
「関西よりJTA2003便がただいま到着いたしました」
甲高い声でのアナウンスが流れた瞬間、那覇空港の到着口A付近の群衆がざわついた。
全国制覇を成し遂げた沖縄尚学の選手たちは、優勝した翌日の8月24日13時4分に那覇空港に着いた。地元紙の社会面に飛行機の到着時刻が記載されていたこともあって、2時間前から1階ロビーは人、人、人でごった返していたらしい。
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場所取りをしようと念のために1時間前に行ったが、到着口Aから動線を確保するための2本のロープに沿って数百人が待機している。クーラーがかかっているとはいえ、もともと狭いロビーに数百人が密集していれば熱気で室内温度も上昇する。親子連れ、夫婦、友だち同士と老若男女を問わず、およそ1000人はいただろうか。愚痴をこぼすこともなく、黙って蒸し暑さに耐えながらヒーローたちを待っている。
「いるいる」「見えるぞ」
13時14分、ガラス張りの到着ロビーに沖縄尚学の選手たちが現れ、預けた荷物を待っている。
出口付近のロープ際には、在校生たちが紺色の沖尚Tシャツを着て陣取っていた。
「夏の優勝って15年前にもあったんですか?」
女子高生が横断幕を支える関係者に尋ねている。彼女たちは15年前の興南の春夏連覇を知らない世代なのだ。それだけ時が経った証だ。
「えっ、こんなに?」比嘉監督や末吉良丞のリアルな表情
そして、13時40分、ついに到着口Aの自動ドアが開き、沖縄尚学の選手たちが現れた。
報道テレビ用カメラ5台、スチールカメラマン約10人が一斉にレンズを向け、さらに1000人ほどの群衆の手が高々と挙げられスマートフォンで撮影をはじめた。
まず主将の真喜志拓斗が満面の笑みで優勝旗を持って現れ、「おめでとう!」「ありがとう!」と声がかかる。次に副キャプテンの新垣瑞樹が優勝盾を両手で抱きかかえながら歩いてくる。皆が写真や動画を撮るのに必死なため拍手はまばらで、祝福や感謝の声のほかには空いた手で指笛を鳴らすくらい。監督の比嘉公也は相も変わらず渋い表情を浮かべながらも、地元に戻ってきた安堵感か、うっすら柔和な雰囲気を醸し出している。そして部長に続き、エースの末吉良丞が歩いてきた。「えっ、何? こんなにいるの?」と素っ頓狂な顔つきをしていたのが印象的だった。


