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ビデオ判定導入は「現実的ではない」…甲子園で紛糾した“誤審問題”を現役審判員はどう考える? 指摘の際に「最初に見てほしい」意外なポイント
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/26 17:01
今夏の甲子園では例年以上にSNSなどで判定を巡る是非を問う声が大きかった印象がある。果たして現役の審判員はその現状をどう見ているのだろうか
「誤審を指摘するなら…」最初に見てほしいこと
現状、現実的ではないようだ。だからこそ、Aさんはより現実的な指摘をすべきだと主張する。
「際どいプレーって、見る人によって、セーフ・アウトだったり、ストライク・ボールだったり、ファール・フェアだったり、必ず2通りの見解が出て、そこから誤審だという話になります。でも、誤審を指摘するなら最初に“その時の審判の立ち位置はどうだったのか”……そこから論を始めてほしいですね。結局『ビデオ判定を導入すべきだ』みたいな話になってしまいがちですが、先に言ったように今すぐの採用は現実的ではないんです。
じゃあ、なぜそんな曖昧なことになったのか。どうしたら人の目でそれが防げたのか。それをちゃんと検証しないと、本当の意味での<現場検証>にならない。せっかくインターネットという役に立つツールが開発されて、映像・画像が誰でも見られるようになったんですから『誤審だ、誤審だ』と人を責めて面白がるだけじゃ勿体ないですよね。何か現実的な解決策を示したほうが、私たち審判員も勉強になるし、自戒にもなる。そっちのほうがいいですよね」
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次々と新たなツールが開発される昨今ではあるが、そうしたものは、人々の、「世の中が良くなるように」という願いが込められて登場したものばかりであろう。
そうであれば、個人の憂さ晴らしや、あげ足取りに使われるだけでは、あまりにも悲しく、情けなく、民度が低い。
問題提起とそれにまつわる議論は、いつも前向きで建設的なものでありたい。

