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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ビデオ判定導入は「現実的ではない」…甲子園で紛糾した“誤審問題”を現役審判員はどう考える? 指摘の際に「最初に見てほしい」意外なポイント
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/26 17:01
今夏の甲子園では例年以上にSNSなどで判定を巡る是非を問う声が大きかった印象がある。果たして現役の審判員はその現状をどう見ているのだろうか
結局、二塁ベースタッチが不完全としてオールセーフの判定に。試合は慶応高が勝利し、その後甲子園に進んだ慶応高は、全国制覇へと一気に駆け上がった。
その時の当コラムでも、今回と同じ現役審判・Aさんに意見を求めている。
「あの時ジャッジした二塁塁審は、たまたま私の友人だったのですが、『間違いなく踏んでいない』と断言していました。やっぱり、審判という立場で言わせてもらえば、『いちばん近くで見ている者の見え方がいちばん正しい』ということを大前提にして判定を託してもらわないと、試合に審判が立ち会う意味がなくなってしまうんじゃないでしょうか」
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Aさんは大学まで選手としてプレーして、高校野球審判としても20年以上、グラウンドで真剣勝負に立ち会っている。
「もちろんものの見え方って、見る角度によって変わりますよね。いちばんいい例が、人の顔ですよ。正面から見た顔と横顔って、ぜんぜん違うじゃないですか。じゃあ、どうするか? 横顔見て、田中さんだよな~と思っても、定かでなければ、正面から見て判断しようとしますよね」
野球の審判も同じだという。
審判の技量で「最も大切なこと」は?
「プレーを見る位置……つまり<立ち位置>というのが、審判はいちばん大事なんです」
審判の技量イコール、ジャッジする時の立ち位置。そう言っても言い過ぎではないと、Aさんは断言する。
「私自身もグラウンドに立つ時は、どこに立ったら、どこに移動したらプレーの全容がいちばんよく見えるのか。次に起こりうるプレーを何通りも想定しながら、打球がこう飛んできたら、こう、こっちに飛んできたら、こう……と、動きを準備するんです。打球が飛んできてから考えてたら、とてもじゃないけど間に合わないですから」

