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野球善哉BACK NUMBER
改めて問いたい甲子園「今大会ベストゲーム」それは準々決勝横浜―県岐阜商だった…名勝負を生んだ横浜の「洗練された野球」は何が違うのか?
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氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/26 11:02
今大会のベストゲームどころか、高校野球史上でも屈指の好ゲームとなった準々決勝、横浜vs県岐商戦
今大会で最も守備が戦術的に洗練されていたのが、横浜高校だった。1947年創部の長い歴史を誇る横浜にはある種、野球を極める上での生き字引とでもいうような、チーム作りの方法論がある。もちろんチームは勝つためにやっているが、その根底にあるのは野球そのものの追求だ。
高校野球のフィールドで「試合に勝つ」ための戦い方や考え方は実際に存在するが、横浜の場合、そこだけを軸にしていない。監督が「目標は日本一」と口にすることはあっても、選手らが鍛え上げられるうえでの目標は、日本の野球界のどこに行っても恥じない「野球知識」、どこでプレーをしても気後れすることがない「スキル」、どこに行っても戸惑うことなくこなせる「戦術」を身につけることだ。
横浜野球は日本野球の基本
「野球では必ず同じプレーが何度も起きるとは限らない、場合によっては100回に一度くらいしか起きないこともある。それでも、俺はそれを徹底させる」
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かつてそう語ったのは、横浜高校を長く部長やコーチとして率いた小倉清一郎氏だった。
いわば、横浜の野球は日本の野球の基本と言える。彼らが甲子園に出場すると、常に、大会が引き締まる。それは彼らが展開する野球が常に、「こうやって野球はやるんだ」というプレーをまるで辞書のように網羅しているからだろう。
1997年に智弁和歌山の主将として全国制覇。のちにプロに進み、今は母校の監督を務める中谷仁は、プロ入り後の衝撃をこのように話している。
「横浜やPL出身の選手と話した時に、野球脳では、小学校6年生と高校3年生くらいの差があると感じました。こんな高いレベルの野球を高校でも教えてもらっていたら、高校時代で消化できなくても、継続しているうちに大学以降で花開くのは当然だろうなと思いました」
今大会の準々決勝の横浜―県岐商戦はまさに、そんな横浜の洗練された野球が発揮された一戦でもあった。
〈横浜が見せた日本野球の真髄とは? 後編につづく〉

