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核心にシュートを!BACK NUMBER
「なぜヒーローのタナカに指摘を?」英国人記者の質問にリーズ監督は…“乱入ファンが肩組み”田中碧26歳の課題「アーセナル戦も厳しさはあるが」
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byRobbie Jay Barratt - AMA/Getty Images
posted2025/08/23 11:03
田中碧とリーズのファルケ監督。コミュニケーションを取る様子から信頼の高さを感じ取れる
開幕節におけるゴール期待値も、シュート数も20チーム中で上から2番目。ペナルティーエリア外からのシュート数は、今節の全チームで最多となる9本も放った。こういう戦いをすれば田中はさらに成長できるという予感がある。
田中はデュッセルドルフでの3シーズンでも、ミドルシュートの能力を地道に、そして飛躍的に磨いてきた。「全シュートにおけるペナルティーエリア外からのシュート率/枠内シュート率」の変遷は以下の通りだ。
21-22:56%/24%
22-23:48%/23.8%
23-24:62%/45.2%
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ミドルシュートの割合を増やしながら、精度を飛躍的に向上させた。自分でコントロールできないチームの成績に左右されず、亀のような地道な努力を続けられるのが田中の才能である。なお、デュッセルドルフ時代よりも守備的なアンカーを任された、昨シーズンのリーズにおける「PA外からのシュート率/枠内シュート率」は以下の通りだ。
71%/25.9%
リーグのレベルが格段に上がったのはもちろん、アンカーである以上、不用意なボール奪取からカウンターを受けるリスクを減らすため、シュートで“強引にプレーを終わらせる”場面も目立っていた。今季は1つ前のインサイドハーフの一角を任されているし、プレミアリーグの方がスケジュールが緩いため(チャンピオンシップはリーグ戦が46試合)、デュッセルドルフ時代のように居残りでシュート練習をする時間も増えるだろうし。この数字もきっと上がると推察される。
リーズ監督は試合後、田中に何を指摘していたのか
話を戻そう。興奮冷めやらない開幕戦後の記者会見でのこと。田中に熱を上げているファルケ監督へ地元記者から質問が飛んだ。
「試合後のピッチ上で、ヒーローのタナカと話し込んでいましたが、一体何を指摘していたのでしょうか?」と。
ドイツ人指揮官の答えはこうだった。
「90分には、(インサイドハーフでコンビを組んだ)シュタッハと田中がチャンネルラン(※相手サイドバックの裏を狙う動き)をしていた。それで少し守備がオープンになっていた。『もっとゴールを取りたい』という姿勢は好きだけど、サポーターの感情に流されず、やりすぎないようにしないといけない。ポジショニングについて賢明な判断を続けることが大事なんだ。
まぁアオにとって初めてのプレミアリーグの舞台ではある。彼がエモーショナルなプレーができるという部分を私は気に入っているし、それによりスタジアムを熱狂させることができる。ただ、あそこで(さらに)熱狂させることに意味はないし、同点にされてしまったら(そこまで頑張った)意味がなくなる。だから勝つことが大切なんだと伝えたんだ」
とはいえ、正しいポジションを取るのが、田中にとって得意なことであるのは言うまでもない。彼は風間八宏や中村憲剛が礎を築いた川崎フロンターレの門下生なのだから。
アーセナル戦での“課題”とは
むしろ、他の能力と比べてこれまで足りなかったのは、サッカーの母国で必須となる感情表現のほうだった。

