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甲子園の風BACK NUMBER
体重50~60キロ台でも“飛ばないバット”でも甲子園優勝校と打ち合える…「なでるスイングではなく」「つないでいけば」胸を張った敗戦校
text by

間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/19 06:01
夏の甲子園初戦・東大阪大柏原戦でタイムリーヒットを放つ尽誠学園の木下。大舞台で打撃に手ごたえを得た声は多い
「ランナーがいない時は狙い球を絞って投球を見極め、チャンスでは球種を問わず初球から振っていきます。ただ、後ろに(広瀬)賢汰がいるので、冷静さは失わずに大振りせず、次につなぐ打撃は忘れないようにしています。賢汰に回せば、複数得点のチャンスが広がりますから」
木下が犠打、生田が四球でつないで広瀬が走者を還した京都国際戦の得点シーンは、まさに理想の攻撃だった。この得点を呼び込んだのは、各打者の打席での粘りだ。低めのボール球に手を出さないように見極め、厳しい球はファウルにして四球を選んだり、安打にできる球を待ったりする。
1回の攻撃は無得点に終わったものの、京都国際の先発・酒谷佳紀投手に27球を投げさせた。簡単にはアウトにならない攻撃が相手に少しずつダメージを与え、チャンスと見たら一気に襲いかかる。生田は「チームとして、1点だけで終わらずに残りのランナーを還す意識を強く持っています。つないでつないでいくことで、結果的に大きな得点になっていきます」と語る。
体重50~60キロ台が多い打線でも戦える
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この攻撃スタイルは、選手の体が決して大きくなくても全国トップレベルのチームと対等に戦えることを示した。尽誠学園のスタメンで身長が180センチを超えているのは、1番打者の金丸淳哉選手しかいない。しかも、金丸は186センチ、71キロと線は細い。体重が最も重いのは投打の要・広瀬の78キロで、50キロ台または60キロ台の選手が数多かった。強豪校にパワーでは劣る分、小技を絡めながら「つなぎの徹底」に活路を見出した。
優勝候補の撃破は達成できなかった。それでも、西村監督の表情は充実感に満ちていた。
「きょうも2アウトで1本出て得点につなげられました。取り組んできたことは間違っていなかったと思います」
選手たちも指揮官と思いは同じ。試合後の取材に応じるナインに涙はなく、真っすぐ前を向いていた。〈第1回からつづく〉
