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甲子園の風BACK NUMBER
《夏の甲子園》低反発バット=飛ばないは幻想か「芯に当たれば飛ぶ」「振り切る選手が多くなった」取材記者が聞いた球児と監督のホンネ
posted2025/08/19 06:00
高川学園戦でタイムリー三塁打を放った日大三・安部翔夢
text by

間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
「数年あれば新しいバットに順応」予想を上回った
1年半前に聞いた言葉が現実になっている。しかも、高校球児の対応力は予測を上回った。
「2、3年後にはバットに慣れて、以前のような打球に戻ると思いますよ」
新基準の低反発バットが導入された昨春のセンバツ、選手たちの打球は明らかに飛距離が落ちていた。ボテボテの内野ゴロが急増し、外野の頭を越える打球は激減した。ただ、センバツに出場した複数の監督たちは「数年あれば選手が新しいバットに順応する」と予想していた。
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球児たちが低反発バットを操れるようになるまで、3年も必要なかった。今夏の甲子園では、大会第9日の第1試合で仙台育英の高田庵冬が大会第7号の本塁打を記録し、早くも昨夏の通算本数に並んだ。
日大三と高川学園の3回戦は、“飛ばないバット”を使っていることを忘れさせる打球が飛び交った。1回表1死一、三塁から高川学園の4番・遠矢文太が放った鋭いライナーは、あっという間に外野に達した。深い守備位置を取っていた中堅手の前で弾む先制打となる。
その裏、日大三は1点を勝ち越して、さらに2死一塁で6番・竹中秀明が打席に入る。カウント2ボール2ストライクから左翼線への二塁打でチャンスを広げる。続く安部翔夢は初球を捉えると、左翼手の頭を越える三塁打。スコアボード上の旗はなびいていない。風の力を借りることなく、フェンス手前まで打球を運んだ。
芯に当たれば以前と同じように飛ぶ
安部が会心の一打を振り返る。
「甘い球は初球から狙っていました。しっかりとバットを振り抜けたので、外野手の頭を越える打球を打つことができました」
強打と評される日大三ではスイングスピードの向上をテーマに、冬場はバットを振り込んできたという。スイングが速くなれば、より長く投球を見ることができるため、バットの芯に当てる確率を高められる考え方だ。
冬の苦労は春に成果として表れた。昨秋と比べて、バットの芯で捉える確率が上がった。そして、「低反発バットは打球が飛ばない」というイメージが払拭された。安部は言う。

