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「狙い通りです」鎌田大地が“597億円補強”リバプールを切り刻むスルーパス…負傷退場も「賢いカマダ」がパレスの武器と取材記者ズバリ
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山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byChris Brunskill/Fantasista,Getty Images
posted2025/08/16 17:01
負傷によって前半途中での交代となった鎌田大地だが、リバプール相手に存在感を見せた
8分にFKを獲得し、10分にボックス内に侵入して1本目のCKを奪うなど、チームも次第に攻撃が形になり始める。そして15分、鎌田が大きな役割を果たした。中盤から1トップのジャン・フィリップ・マテタに通したスルーパスで決定機を創出したからだ。マテタの1対1こそ相手GKアリソン・ベッカーに止められたものの、その流れからボックス内に持ち込んだFWイスマイラ・サールが、CBフィルジル・ファン・ダイクのファウルを誘った。このPKによって1-1とスコアをタイに戻した。
「そんなにひどくはないと思います。検査(翌日予定)をしないと何とも言えないところですけど。自分が相手選手の足を蹴っちゃって、(膝が外に)開いてしまった感じです」
鎌田は試合後、まずは自身のケガの状況について触れた。それとともに語ったのは「狙い通り」と評し、リバプール守備網を切り刻んだワンタッチでのスルーパスである。
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「僕と(アダム・)ウォートンだったり、中盤の選手が、前が裏に抜けたところにできるだけパスを出すという感じでやっていた」
同点とした4分後には、積極的な攻撃参加が目立ったリバプール右SBフリンポンのクロスがそのままゴールに吸い込まれ、パレスは再び一歩リードを許した。それでも、慌てていなかった。鎌田こそ早々にピッチから去ったもののカウンターを中心に、攻撃の頻度を増していった。後半32分、サールの同点ゴールをアシストしたのは、鎌田とともに中盤センターで先発したウォートン。つまり意図した働きができたわけだ。
リバプールはその6分ほど前に遠藤を中盤の底に投入していた。リバプールの現MF陣で断トツと言える守備能力は、この日こそ結果に至らなかったが――個人の責任ではない。就任2年目に、自らのチーム作りを進めるアルネ・スロット監督は交代に伴ってシステムを変え、2ボランチの1枚を務めていたドミニク・ソボスライが前線にポジションを取り、4バックの手前にスペースが生まれやすい状態は変わらないままだった。
“賢いカマダ”が必要なワケ
一方でパレスから見ると、鎌田と交代したウィル・ヒューズも持ち味を見せた。チーム2点目の契機となるスライディングタックルを見せるなど、活躍した。かつて、ダービー(現2部)で頭角を現した10代時はパスセンスが注目されたが、30歳のベテランとなった今はタックルやブロックを披露した。
「柔」のウォートンと「剛」のヒューズという中盤中央は悪くはない。しかし、パレスには「賢」の鎌田も必要だ。
