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「俺がやってることできる選手が他にいる?」32歳遠藤航がリバプールで得た“特別待遇”「上司ガチャ」を好転させるスキルと生き方〈プレミア開幕〉
posted2025/08/15 11:02
リバプールで着実に信頼を積み上げる遠藤航(32歳)。旧知のテレビディレクターに本音を明かした
text by

小野晋太郎Shintaro Ono
photograph by
Kiichi Matsumoto
久しぶりのスタメンで、遠藤航に与えられたポジションは、リバプールへの移籍を勝ち取り、レギュラーをつかみ取った守備的ボランチ(アンカー)ではなく、センターバックだった。
ちなみに、この時、チーム練習でもほとんどそのポジションを守っていない。それでも、最初のテストでいきなりフル出場を果たすと、途中からキャプテンマークも任された。
クラブを「会社」で例えるなら指揮官の中で遠藤の「ジェネラリスト」としての信頼が、ここで始まったことになる。練習でほとんどやったことのないような急遽のポジション対応も、文句ひとつ言わずに、黙々と任務を遂行する。監督(上司)の立場で考えれば、なぜ遠藤がチームに重要か説明するのは難しくない。
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以降、3バックでも4バックでも、センターバックでもボランチでも、遠藤はチームでその時必要な場所に配置されるようになる。そうして違うポジションで徐々に出場機会を増やすことで、さらにそこで重要なタスクを与えられていく。
でも、ちょっとだけ冷静に考えてみてほしい。先述の会社員の例で言うならば……
1.「世界屈指の一流ビジネスマンが集結する、外資系リバプール会社」にヘッドハンティング
2. カリスマ上司の元「苦労して立場を確立」。突如、別の上司が来て、本職とは違う部署に配属
3. 突然の辞令「いつもと違う仕事」で「若手の面倒を見ながら、リーダーをやれ」
4. やっぱり会社の都合もあり、場合によって「元の業務も……同時にこなしてくれるか?」
文字にしてみると……普通の人にはどう考えてもムリゲーすぎる。だが、僕たち日本の主将はこれを全てこなしたうえで、最後にはそもそも存在していなかったポジションすら作り出した。
5. 辞令 遠藤航の貢献と活躍に、特別待遇「クローザー」を新設する
「俺の適性ポジションってどこ?」
今でこそ守備的ボランチ、いわゆるアンカーの筆頭格として世界でも名前を挙げられる遠藤だが、実は日本にいたときはほとんどそのポジションではプレーしていない。センターバックにウイングバック、時にはFWまで、さまざまなポジションを経験してきた。
遠藤は当時こう語っていた。
「いつも聞かれますよ、『適性ポジションは?』って。特徴が目に見えてはっきりしてるわけじゃないから。スペシャリストと比べて色んな場所でプレーさせられる。一般社会だと、どう言うんですかね。色々と事業やってるし、会社の中では評価はされてる感じはあるんだけど、外からは凄い所が見えないっていう(笑)。 でもそもそも一緒にプレーしている選手と監督に評価されることが一番大事で。それはどこにいっても一緒だと思いますけどね」
遠藤にとって大切なのはポジションではなく、チームメイトと監督に評価されること。それを続ければ世界にも近づけると信じていた。


