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「狙い通りです」鎌田大地が“597億円補強”リバプールを切り刻むスルーパス…負傷退場も「賢いカマダ」がパレスの武器と取材記者ズバリ
posted2025/08/16 17:01
負傷によって前半途中での交代となった鎌田大地だが、リバプール相手に存在感を見せた
text by

山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Chris Brunskill/Fantasista,Getty Images
「ファンには、どれだけお金を積んでも得られない、心が豊かになる報酬を手にしてもらうことができた」
クリスタル・パレスのオリバー・グラスナー監督は言った。8月10日に行われたコミュニティシールドで、リバプールを2-2の末にもつれ込んだPK戦(3-2)で下した指揮官が浮かべた納得の表情からは、チームにとって精神的なエネルギー注入をもたらす結果となったことが窺えた。
負傷退場も鎌田は同僚と笑みを
勝者に銀色の盾(シールド)が贈られる表彰セレモニーには、前半29分に右膝を痛めてピッチを降りた鎌田大地の姿もあった。ウェンブリー・スタジアムのスタンド上段まで階段を昇って参列。優勝メダルを受け取り、ジェフェルソン・レルマらと笑みを浮かべた。眼下のピッチでは、後半26分に途中出場したリバプールの遠藤航が、日本代表でのチームメイトである鎌田を含むパレス陣営に拍手を送っていた。
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プレミアリーグ開幕1週間前の「前哨戦」には、“プレシーズン最終戦”との見方もあった。とはいえパレスは、8万2000人を越す観衆を集めたウェンブリーで、今夏に3億ポンド(約597億円)規模の補強を敢行したリバプールを相手に2度のビハインドを追いついてみせた。
パレスはこの一戦、ほぼ昨季と変わらない顔ぶれで試合に臨んでいた。背景には、UEFA(欧州サッカー連盟)から言い渡された、マルチオーナーシップ関連の規則違反に対する処分もあったに違いない。そのパレスが、リバプールに勝ったのだ。
開始早々の4分にウーゴ・エキティケに決められた先制点は、敵に8割以上ボールを支配されていた最中の失点だった。とはいえ――。
「立ち上がり10分間で圧倒されたとは思っていない」
こう語るグラスナー監督の発言には、筆者も同感していた。強豪戦でのカウンター主体は、昨季も奏功した実績があり、この日もうろたえることなく戦前のプランを貫いて立ち直った。
リバプール守備陣を切り刻んだパスの“意図”
その一員として、3-4-2-1システムの左センターハーフで先発した鎌田も、しっかりと存在していた。

