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公立校の甲子園出場「過去最少わずか6校」の裏で…“偏差値70超え”フツーの進学校野球部が県大会で躍進のナゼ「スポーツ推薦も、朝練もなし」
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別府響Hibiki Beppu
photograph byYuki Suenaga
posted2025/08/17 11:02
群馬大会でベスト4に入った高崎高校野球部
その白眉が、上述の桐生第一戦だった。チームを率いた飯野道彦監督もこう振り返る。
「組み合わせ、巡り合わせが良かったのもありますね。桐生第一と当たるまでは全部公立校が相手で、そこでいろいろな経験を積めたのが大きかったです。今年は日程面も味方してくれて、桐生第一との試合までに選手が回復する時間が取れたのは大きかったと思います。どうしてもうちのような公立校は選手層がネックになりますから」
スポーツ推薦なし、朝練なし「部員の確保も大変」
実際、今年のタカタカは長いイニングを投げられるのが3年生エースの黒田湊1人しかいなかったという。ただでさえ疲弊しがちな暑い夏の大会では、運の要素も大きいのだ。
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そんな選手層の薄さの要因には、公立校ゆえに難しさがある。
群馬県の公立高校には現在、いわゆる推薦入試のシステムがない。タカタカのような県下有数の進学校からすると、たとえ野球にある程度秀でていた中学生がいたとしても、入学には学業面のハードルが非常に高くなる。結果的にそれは、選手獲得の面で難易度が上がってしまうことにつながる。
「入部するか決めていない生徒でも、入学してから必死に勧誘して入ってもらうこともありますから。男子校である分、他校さんよりは状況は良いのでしょうが、それでも部員の確保だけでも大変です」(飯野監督)
現在は例年、概ね各学年15名程度の部員が入部してくれているという。
スポーツ推薦なし。朝は7時半から学校の補習があるため、朝練はできない。放課後の練習も、ほとんどの生徒が塾や予備校があるため1日2時間半が限界だ。飯野監督自身も本業は生物の教諭で、数年での人事異動もあるため、私学のようないわゆる「長期政権」も難しい。
では、そんな“ないないづくし”の厳しい状況の中で、なぜタカタカはベスト4まで進出することができたのだろうか?

