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「偏差値70超え」公立進学校の野球部が“県大会でベスト4”快進撃はなぜ起きた?「練習は生徒が考案」「時間がないからこそ…」監督と選手の証言
posted2025/08/17 11:03
高崎高校を21年ぶりの群馬大会ベスト4に導いた飯野道彦監督
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by
Yuki Suenaga
◆◆◆
「タカタカの生徒の学校生活って、忙しいんですよ――」
飯野道彦監督の口を衝いたのは、そんな言葉だった。
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群馬県立高崎高校野球部。県内では「タカタカ」の愛称で呼ばれる同校は、県下有数の進学校でありながら、今夏の群馬大会で21年ぶりにベスト4に進出した。
野球の部活動に力を入れる私学が圧倒的優勢のこのご時世にあって、スポーツ推薦制度もない公立校にとしては異例と言っていい快挙である。
――なぜ、タカタカは躍進できたのか?
そんな質問をぶつけると、飯野監督は冒頭の言葉から話をはじめてくれた。
「私も他の学校をいくつか歴任してますが、それと比べても高崎高校の生徒は忙しいんです。そもそも普段の勉強もありますし、あとは文科省からスーパーサイエンスハイスクールに指定されていることもあって、授業以外に全生徒が研究活動、実験、発表もやらないといけないんです。文化祭などのイベントも盛んだから、それにも時間を割かれる。そこに地域の高校とやる定期戦なんかも入ってくるので」
1日の練習時間は2時間半
平日は朝の7時半から学校の補習があるため、部活でも基本的に朝練はできない。8時半から正規の授業が始まると、月水木曜日は16時5分まで、火金曜日も15時5分まで続く。
そこから準備をして部活がはじまるわけだが、「部員には塾や予備校通いの生徒が半分以上」(飯野監督)ということもあり、19時には全体練習が終わる。とすると、正味の全体練習時間は長くとも2時間半程度しか取れないことになる。もちろんそこから自主練をする選手も少なくないというが、あくまで個人練習の範疇にとどまらざるを得ない。
一方で、そんな限られた環境だからこそ、「そこに躍進の理由があったのでは」と飯野監督は考えている。

