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甲子園の風BACK NUMBER
「ウチは特待生も寮もない…」“史上最少6校のみ”甲子園から公立校が消えていく…出場6校の監督に聞いた、公立校の本音「あの金足農も部員数に危機感」
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/15 11:08
沖縄尚学に敗れ、泣き崩れる金足農の吉田大輝
「やっぱり、あれですね。特待生(笑)。昼から練習できる高校もあるじゃないですか。寮もそうです。うらやましいと思う部分ではあります」
そう言って橋口は笑った。恨みがましく話すわけでなく、むしろ現在の状況を楽しんでいるようにも映った。
宮崎商は初戦で開星(島根)と戦った。タイブレークにもつれる激戦になった。10回表の攻撃を無得点で終え、その裏に犠牲フライで力尽きた。5-6。昨夏と同じ、初戦1点差で涙をのんだ。公立6校中1校が甲子園を去った。
「県外選手も受け入れないと…」
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つづいて「公立校の言い分」を尋ねた人物は金足農を率いる中泉一豊(52歳)だ。朴訥とした口調でぼそぼそと話しはじめた。
「(甲子園で)勝てればね。勝つことで全国の公立校に何かしらメッセージを伝えられると思うんですけども」
金足農は秋田市にある公立伝統校だ。エース吉田輝星を擁して甲子園準優勝を果たした、7年前のカナノウ旋風は記憶に新しい。その年も今年も秋田大会で強豪私立・明桜を準決勝、決勝でそれぞれ下して甲子園切符を手にしている。
「選手層の厚さは私立にかないません。うちもコンスタントに毎年20人弱は入部してくれていたんですけど。今年の1年生はかなり減りました(1年生部員6人)。近隣の中学3年生の生徒数が少なかったんです。危機感はありますよ、やっぱり」
金足農は県外生徒を受け入れていない。メンバー全員が秋田出身である。
「県もそうですし、甲子園を勝ち抜いていくためには、県外選手も受け入れなきゃいけないのかもしれない。ただそれは学校を挙げてやらないとできないので。もっとPRせんといかんですね」
――農業高校の魅力を訴えながら野球部員も増やすと。
「そうですね。座学だけじゃなくて実習も多い。うちは自然と触れられますから。心の部分の豊かさも養える」
それに、と中泉がつづけた。

