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「俺がやってることできる選手が他にいる?」32歳遠藤航がリバプールで得た“特別待遇”「上司ガチャ」を好転させるスキルと生き方〈プレミア開幕〉 

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小野晋太郎

小野晋太郎Shintaro Ono

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2025/08/15 11:02

「俺がやってることできる選手が他にいる?」32歳遠藤航がリバプールで得た“特別待遇”「上司ガチャ」を好転させるスキルと生き方〈プレミア開幕〉<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

リバプールで着実に信頼を積み上げる遠藤航(32歳)。旧知のテレビディレクターに本音を明かした

 遠藤と入れ替わる形でリバプールを離れた元イングランド代表のミルナーは、現在も三笘薫が所属するブライトンでプレーしている。プレミアリーグにおいて、現役最長の24年目を迎え、歴代最多出場数まであと20試合に迫っている鉄人だ。

 前指揮官のユルゲン・クロップは遠藤が30歳での入団になったことを記者に聞かれたとき、こう答えている。

「私にとって最大のレジェンドの一人がミルナーで彼は29歳でここに来た。ミルナーがいなければ、ここ数年のリバプールの成功はなかったと断言できる。私たちがどのように試合を終わらせたか、それはいつも彼が出場して、素晴らしくプロフェッショナルなやり方で試合を終わらせたことだ。ワタルも同じようなインパクトを与えることができる。彼がここにいてくれて本当に嬉しい」

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 中盤を本職として、守備的なポジションはどこでもプレーする。数々のタイトル獲得に貢献した功労者への最大の賛辞は、まるで未来を予言したかの様なクロップからの遠藤への言葉そのものだった。

 本人は意識していなかったが、入団当初から周囲はよく二人は比較された。フィジカル測定では、とある数値を出されて「ミルナーよりも(遠藤の方が)高いよ!」とスタッフから声をかけられてもいる。今シーズン中に40歳になるプレミアの「鉄人」と「普通に並んで」評される男、それこそが今の日の丸の腕章をつける男なのだ。

「俺が40歳になる時…、長男が20歳になるから、一緒にプレーできたら面白いですよね。この前、息子がサッカーでイタリア遠征にいったんですよ。割と才能はあるかもしれないし、長友(佑都)さんも見てたら、ちょっとだけ現実味もあるかなって」

 40歳になる時の立場も、歩んできたキャリアの道のりも、4人の家族を完ぺきに育て上げるパパとしての人生も、日本を代表して戦う外資系アスリート戦士を、僕たちの人生と重ねるのは正直……難しい。

 会社の待遇には不満を言いながら、もちろん「上司ガチャ」にはグチと文句が止まらない。ろくに仕事の成果も出せないままで、不惑を迎えてしまう日本のサラリーマン(自分)たち……それでも、今年も海の向こうのプレミアリーグ、真夜中のタブレットには、背中で魅せ続ける「俺たちの部長」がいる。

(文句だけ言うのもいいけどさ、まずは与えられた環境で輝こうよ)

 とりあえず今年もまずは出社だけでも目指す月曜日を迎えよう。深夜にもらった元気と決意は、むしろ、寝坊でなくしてしまうかもしれないけれど。〈全3回・完〉

◆◆◆

今週末に開幕するプレミアリーグ。遠藤航が所属するリバプールは日本時間8月16日(月)朝4時、本拠地アンフィールドにボーンマスを迎える。

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久保建英になぜキャプテンを?「あの夜、森保監督が部屋を訪ねてきて…」プレミア王者リバプール遠藤航32歳が考える「監督と主将」理想の関係
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