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なぜ遠藤航はリバプールで生き残れたのか? サッカー人生最大の“冷遇”「上司ガチャ」に巻き込まれても腐らない究極の思考法〈プレミア王者の日常〉

posted2025/08/15 11:01

 
なぜ遠藤航はリバプールで生き残れたのか? サッカー人生最大の“冷遇”「上司ガチャ」に巻き込まれても腐らない究極の思考法〈プレミア王者の日常〉<Number Web> photograph by Robbie Jay Barratt - AMA/Getty Images

いよいよ新シーズンが開幕するプレミアリーグ。連覇を狙うリバプールで、遠藤航はどんな輝きを放つだろうか

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小野晋太郎

小野晋太郎Shintaro Ono

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Robbie Jay Barratt - AMA/Getty Images

プレミアリーグ王者として帰国した遠藤航が母国で過ごしたオフはわずか2週間。それでも、遠藤航は忙しいタイムスケジュールを縫ってまで、旧知のテレビディレクターとの食事会に参加した。日本最後の晩餐で発した言葉は、サッカーファンのみならず、世のビジネスパーソンに刺さる金言ばかりだった。本稿ではリバプールでの日常に迫る。【NumberWeb特別インタビュー全3回の2回目/第3回に続く】

 シャンパンファイトで踊り狂うロッカールーム。

 プレミアリーグでは優勝したら極太の葉巻を燻らせるのが伝統らしい。理由も作法も知らなかったが、ストイックな男たちが気を許す、ほんのひと時の英国紳士の嗜みとロイヤルスタイル。長き歴史を持つサッカーの母国で迎える、特別な瞬間。ケムリは一瞬で消えていくが、名は永久に歴史に刻まれる。チームメイトたちを傍目に、遠藤はちょっとだけむせて、咳き込んだ。

 6万人を超えるKOP(リバプールサポーターの愛称)が集まった聖地アンフィールド、35年ぶりにファンの前で果たすリーグ優勝。遠藤航は、その瞬間をピッチで迎えた。

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 ピッチで与えられた役割は、本職ではない「右サイドバック」。試合終了の笛が鳴り響くと、遠藤はピッチサイドから爆発するようにスタッフがフィールドになだれ込むのを真横で確認し、少しだけ膝に手を置いた。人生初の欧州1部リーグ制覇を、子供のころから憧れたプレミアリーグ、それもリバプールで迎えることになるとは……。

アンフィールドに響く遠藤のチャント

 振り返ると、同じテーブルでいつもコーヒーを飲む仲のブラジル代表GKアリソンが一人うずくまっていた。同じタイミングで目が合ったDFロバートソン(スコットランド代表キャプテン)のもとに駆け寄り、どちらからともなく抱き合う。ふと戦車のような重みを感じて首を回すと、ファンダイク(オランダ代表キャプテン)が覆い被さっていた。

 ここは紛うかたなき、サッカー界の頂点だ。この瞬間のために、全てを捧げてきた。

 優勝をかけた第34節トッテナム戦で遠藤は76分に「クローザー」としてピッチに立った。途中交代で共にピッチに入るのは生え抜きの若きスター、U-21イングランド代表のエリオット。だが、スタジアムに響き渡ったチャントは、遠藤のものだ。その歌詞を締める一節にこんなフレーズもある。

「エンドー、エンドー、エンドーはリーグを制覇する」

 実はこの日だけではない。ホームだけでなくアウェーの地でも、試合が終盤になればスタジアム中に遠藤のチャントが響き渡った。加入してからまだ2年も経っていないにもかかわらず……。フットボールにうるさくそして熱い、赤き港町のサポーターの心を掴んできた証だった。

【次ページ】 新監督スロットからの冷遇

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