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なぜ遠藤航はリバプールで生き残れたのか? サッカー人生最大の“冷遇”「上司ガチャ」に巻き込まれても腐らない究極の思考法〈プレミア王者の日常〉
text by

小野晋太郎Shintaro Ono
photograph byRobbie Jay Barratt - AMA/Getty Images
posted2025/08/15 11:01
いよいよ新シーズンが開幕するプレミアリーグ。連覇を狙うリバプールで、遠藤航はどんな輝きを放つだろうか
ピッチに入る背中を押したのは、新監督のアルネ・スロットだ。オランダからやってきた46歳の新進気鋭の指揮官は、シーズン当初から遠藤を信頼していたわけではない。しかし、シーズンの佳境にもなれば――これまでのどの監督もそうだったように――最後は遠藤をピッチに送り出すようになった。
たとえどんな超人的なフィジカルを持ち、どんな優れた才能をもっていたとしても、サッカー選手は、結局はクラブに「雇われている」。だから僕ら一般の社会人と同じく、上司は選べない。近年聞く言葉で表現するならばある種の「上司ガチャ」……つまりは「監督ガチャ」で人生が決まってしまう選手は多くいる。遠藤も例外ではない。
白紙に戻ったレギュラー争い
自分を呼んでくれた名将ユルゲン・クロップは、1年で突如退任した。
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昨シーズンは58試合中43試合に出場し、チームでは先発34試合と5位の出場数を誇った。僅かなチャンスから信頼を積み上げて掴み取った名門のレギュラーは、新しくきた若き野心家のもと完全に白紙になった。ローテーションを組んだクロップに対し、スロットはチームを固定した。結果ベテランたちが輝きを取り戻す一方で、ヌニェス、エリオット、クアンサーら前指揮官の元でその色を出し始めた選手たちは、如実に出番を減らしてた。
中でもレギュラー格から明確にベンチに回されたのが、32歳の日本のキャプテンだった。スロットの不遇の扱いに対し、不満を述べるものもいた。だが、遠藤は腐らなかった。
「確かに今までキャリアは割とずっと試合に出てきたけど……ここまでは中々なかったですね。ただどんな感情にしてもですけど練習でモチベーションを態度に出すことも、俺はないです。言い方は難しいですけど、初めてのんびりやるくらいの感覚をプラスに。途中出場なら与えられたチャンスの中でどう結果を残していくかだけ、考えればいいんで」

