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“喧嘩別れ”ではない名将からの巣立ち…冨安健洋26歳はどう進化するか「再現性より創造性かな」日本代表での即答が取材記者に今、響くワケ
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/09/04 17:03
冨安健洋はここ1年以上日本代表未招集だが、最終ラインにおいて欠かせないキープレーヤーである
一つの道を究める者は「守破離」を経て、1人前になるという。具体的には以下の通りだ。
第一段階:「守」は、師の教えを「守る」ということ。スポーツの世界でも、誰かに教えられたり、誰かの動きを見て学ぶところから始まるのは言うまでもない。
第二段階:「破」は、師の教えを高度にこなせるようになった後、それを応用していくなかで、ときに師の教えとは異なる動きなどを取り入れること。良い意味で師の教えを「破る」イメージだ。
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第三段階:「離」は、師から巣立っていくということ。師の教えを理解し、自分なりにアレンジをできるようになったら、そこから先に独り立ちをして、師から「離れる」ということだ。
冨安の考えに、遠藤も同意した
アーセナルでの4シーズンを経て、冨安は師の一人であるアルテタから「離れる」決断をしたと言えるのではないだろうか。喧嘩別れというようなニュアンスとは対照的な、満を持した卒業・巣立ちと今回の契約解除と言い換えられる。
見逃せないのは、冨安が最初から戦術の重要性を感じていなかったわけではないということ、世界最先端の戦術を学んでいった先に、戦術にとらわれすぎないサッカーにも、魅力や可能性を感じているということだ。
そうした冨安の考えについて、今回のイベントのホストである遠藤もしっかり同意していた。
「(戦術的に)決められていることがなさすぎると、『もっとあった方が良い』となる。でも、逆にありすぎても、『ありすぎじゃない?』と選手は感じるんです。それは普通の仕事でも同じでしょう。例えば(上司などから)『これをやりなさい』と言われる。それをやらないといけないですけど、『でもこの時は、こうでしょう』みたいなことを臨機応変にやれる人も、それで上手くいけば評価されるわけだし。まぁ、そこのバランスはめちゃめちゃ難しいですね。最終的に自分が判断するということです」
再現性というより創造性かな、の真意
アルテタが指導するサッカーを必死に学んできた冨安が、その経験を得たうえで、その場の最適解を導き、実践することによって、日本代表を前に進める。今回の話を聞くと、ワクワクするなというほうがおかしい。何より、森保一監督は以前、こんな風に話していたくらいなのだから。
「日本サッカーが世界で勝っていくために、トミがアーセナルでやっていることを基準にして、代表チームのクオリティを上げていきたい」
今回のイベントを経て、最後に思い出さずにはいられなかったことがある。

