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「ポテンシャルからすれば三冠王とトリプル3両方ですわ」阪神・佐藤輝明はなぜ覚醒した? 大学恩師がゲキ「絶対にタイトルを獲らなアカン」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/08/31 11:02
今季ついにそのポテンシャルにふさわしい数字を叩き出している佐藤。若き日にその才能を見出した近大の恩師に覚醒のわけを聞いた
しかし、佐藤輝明というプレーヤーは、プロ入りからの過去4年間、どちらかといえば、何かしら頼りない感が抜けなかった。例えば2024年5月14日の中日戦(愛知・豊橋)では、バント処理の捕手からの送球を三塁の佐藤が落球。逆転負けにつながる痛恨の失策に、監督の岡田彰布(当時)の逆鱗に触れ、翌15日に即2軍落ちとなった。
岡田監督と佐藤の関係に気を揉む阪神ファン
口さがない阪神ファンが、早大出身、独特の勝負勘に理詰めのきめ細かい采配で白星を積み上げていく岡田の野球に、よく言えばおおらかで、きつく言えばちょっとのんびりしている感がある佐藤は、それこそ性格的にも合わず、佐藤はやりづらくてやる気を失っているのでは……と、性格論にまで言及してあれこれ分析するのも、阪神ファンの、というよりは、関西人のおせっかい気質だろう。
岡田は監督退任後の2025年6月15日、解説のために訪れた楽天戦(楽天モバイルパーク)の延長11回、本塁打を確信して全力疾走を怠り、シングルヒットにとどまった佐藤の凡走に「論外よ」「打ったらバットを放って一塁へ走る。ちっちゃい時からやって」と関西弁で厳しく指摘。これがまた関西では、スポーツ各紙の1面で大騒ぎになるのだ。
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その佐藤が、突如!? としてこんなに頼もしくなると、うれしいのはもちろんだが、むしろ戸惑いを隠せないのも、また猛虎党たちの常である。
恩師に「変身の背景」を聞く
そこで今回、その“変身の背景”を解き明かすべく、佐藤輝明の恩師、前近大監督の田中秀昌に取材をお願いした。佐藤は兵庫・仁川学院高では甲子園出場経験もなく、3年夏は兵庫大会1回戦で、公立高にコールド負け。その無名校にいた、無名の一選手の素質を見抜き、近大での4年間で磨き上げ、ドラフト1位の逸材にまで成長させた名伯楽が田中だ。

