- #1
- #2
マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「エンジョイ・ベースボール」は“高校野球を変えたのか”問題 あの“旋風”から2年…甲子園は出られずとも関係者が「慶応はスゴい」と語るワケは?
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2025/08/12 11:02
2023年、エンジョイ・ベースボールをスローガンに夏の甲子園を制した慶応高校。一方で、その後は全国の舞台に届かずにいる
諸説あるだろうが、その指導者の方は、神奈川を勝ち抜くにはまず逸材を集めること。普通の生徒がいくら努力しても「頂点」はムリと言いきった。
さらに、よく聞くのが、日常の学習レベルが高く、進みも速いので、野球よりそちらについていくのがたいへんという事情。これは、体感としてよく理解できる。
入学後に求められる「ハイレベルな文武両道」
慶応高が「慶応義塾大学進学100%」なら、早稲田大学高等学院(東京)というのも「早稲田大学進学100%」の付属高校である。そこの卒業生の端くれとして、私も当時、とても苦労をした。
ADVERTISEMENT
100点法の成績評価で、59点以下が赤点。普通の高校は、50%取れば赤点は免れると聞いていた。
そしてさらに、私たちが「悪魔の教科」と呼んでいた「第二外国語」が必修なのも、大きな負担になった。英語以外に、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中国語のどれかを履修しなければならなかった。
慶応高の学習環境も大差ないはずで、入学するのも難関だが、入学後の「文武両道」を維持していくのも、かなりハイレベルな頭脳と体力と精神力が必要になってくる。容赦ない留年者の存在もよく耳にする。
長く高校球界を見つめてきたベテラン記者の見方は、もっと明快だ。
「あの代の慶応(高)は、よく覚えてるんですよ、たまたま何試合も見てたんで。正直、新チームの秋は、そんなに強いと思わなかった。それでも、独特の勢いがあって関東大会も勝ち上がって、センバツじゃないですか。最後の夏も、あの踏んだ踏まないがあって、甲子園に出てる。
説明のしようがないけど、あの代の野球には、なにか大きな<波>を作れる力があって、いい波が来たから乗っちゃおうぜ! みたいな。そういうのを、エンジョイ・ウェーブっていうのかどうなのか知らないけど、独特のエネルギーを持ったチームだったことは、間違いないんじゃないですかね」

