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「野球を辞めてゴルファーになろうと」牛島和彦”史上最大のトレード”拒否に兄貴分・星野仙一が深夜の説得も…「気持ちは全然固まらなかった」
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赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/05 11:11
「ネクタイを締めて来い」と牛島(右)を自宅に呼び、深夜の説得に臨んだ星野(左)。牛島の心は揺れ動いていた
牛島は、星野が関わっていたイベント、ゴルフコンペやサイン会の関係者、地元の後援者も紹介されている。ドラゴンズの中心選手として、牛島にそうした付き合いも引き継がせたのだ。
「それほど面倒を見てくれた星野さんが監督になるというので、僕も、よし、頑張らなきゃと、11月に浜松の秋季練習で一所懸命汗を流してたんですよ。それが12月になった途端、トレードですから、何のために必死こいて練習したのかと思いますよね。
丸2日、いろいろな人に相談して、意見を聞いて、最後の最後に法元さんに電話しました。『俺、辞めるわ』と言ったら『そうか、わかったよ』と言いながら、『ユニフォームが変わっても、おまえの投げる姿をもうちょっと見たかったな』と言うんです。
その時、そうか、そう思ってくれる人もいるんやな、と感じた。同情や慰めじゃなく、野球人として僕を取ってくれた人の正直な言葉かなと。そこから8、9割、野球を辞めるほうに傾いていた気持ちが、また野球をやるほうに傾いていった。結局、ロッテに行こうと決めたのは、会見の日の朝でした」
ロッテに行きます
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牛島が記者会見場に入ると、居並ぶ記者とカメラの後ろに星野が立っていた。「ロッテに行きます」という牛島の声を、表情を変えずに聞いていたという。後日、星野は新幹線名古屋駅のプラットホームまで牛島の見送りにやってきた。牛島が「落合さんのお迎えですか」とジョークを飛ばすと、星野は「バカモン!」と笑って一喝。そして、握手を交わして別れたのだった。
こうして移籍したロッテで、牛島は思わぬ選手から「おまえを取ってくれと言ったのは俺だ」と打ち明けられる。
〈第3回につづく〉

