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「野球を辞めてゴルファーになろうと」牛島和彦”史上最大のトレード”拒否に兄貴分・星野仙一が深夜の説得も…「気持ちは全然固まらなかった」 

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赤坂英一

赤坂英一Eiichi Akasaka

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photograph byJIJI PRESS

posted2025/08/05 11:11

「野球を辞めてゴルファーになろうと」牛島和彦”史上最大のトレード”拒否に兄貴分・星野仙一が深夜の説得も…「気持ちは全然固まらなかった」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

「ネクタイを締めて来い」と牛島(右)を自宅に呼び、深夜の説得に臨んだ星野(左)。牛島の心は揺れ動いていた

 そう語る牛島と星野は、80~82年の3年間、中日で現役時代が重なっている。高卒で入団した牛島は、付き人のように星野の身の回りの世話を命じられる半面、誰よりも星野に可愛がられた。

「19歳だった1年目のオフ、中日投手陣のゴルフコンペがあって、星野さんの家に呼ばれたんです。朝5時半に寮から駆けつけて、星野さんや知り合いの方の荷物をベンツのトランクに積んで、ゴルフ場に着いて荷物を降ろしたら、今度は星野さんにベンツのキーを渡されて、『車を駐車場に停めてこい』ですよ、高卒1年目で19歳の僕に。ゴルフが始まったら、僕の役目はフォアキャディー。終わって星野さんの家に帰ったらバーベキューが始まって、僕が肉を焼いたり、飲み物を作ったり。

『割れる茶碗を買ってこい!』

 シーズン中は星野さんのグラブやスパイクの手入れをしたり、試合中にタオルやおしぼりを渡したり、アンダーシャツや着替えをビニール袋に入れて洗濯に出したり、身の回りのことは何でもやりましたね。星野さんは怒るとベンチに置いてある茶碗を床にたたきつけて割っちゃうんで、後始末が大変だから、僕がプラスチック製に変えたこともあった。そうしたら、『茶碗が割れんとストレスが溜まる! 俺が金を出すから陶器を買ってこい!』と怒られちゃって。

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 その代わり、野球のことは何でも親切に教えてもらった。僕がホームランを打たれた直後、どうして打たれたのかと聞いたら、あのケースであの打者にあのカウントからあんな球を投げるから打たれたんだと、具体的にわかりやすく教えて頂きました。何でも聞きやすかったし、怒られてもええからと懐に飛び込んでいくと、どんどん答えてくれる先輩でした」

 83年4月3日、ナゴヤ球場での阪急(現オリックス)とのオープン戦が、星野の引退試合となった。星野を乗せてグラウンドを一周するオープンカーに、牛島も同乗している。スタンドに手を振る星野にタオルを渡したり、ファンに渡された花束を受け取ったり、最後まで甲斐甲斐しく弟分の役割を務めた。

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