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「極論だと“夏実施をやめる”となりますが」酷暑の高校野球…高野連が悩む現場のリアル「地方大会は冷風機、扇風機の取り合いになるようで」 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2025/08/05 06:02

「極論だと“夏実施をやめる”となりますが」酷暑の高校野球…高野連が悩む現場のリアル「地方大会は冷風機、扇風機の取り合いになるようで」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2023年夏の甲子園で、チームメートの首を冷やす慶応の清原勝児(当時)

 年々暑くなっているのは間違いないところですから、極論を言えば、この時期に実施するのをやめるとか、どこか別の会場で、ということになりますが、1~2年ですぐ動けるわけではありません。長期的な展望は持つべきかとは思いますが、それとは別に、今置かれた環境でなにができるのか? 猛暑によるリスクはゼロにはならないでしょうが、少しでもリスクを減らそうとの考えで、新たな施策を導入したわけです」

――大会期間中の気温や湿度の変化などには、どう対応するのでしょうか。場合によっては試合を中止するようなことはあり得るのでしょうか?

「気温や湿度などは計測しています。確かにその数字は大事ですが、数字だけが独り歩きすると、何もできなくなってしまう可能性がある。もちろんWBGT(暑さ指数=湿度、日射・輻射など周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた熱中症を予防する目的で考案された指標)も計測しますし、いろいろ情報を収集しながら判断します。グラウンドレベルに立ってみて、今日はちょっと暑くてより注意が必要なのではないかという時には、チームに注意を喚起したり、よりこまめな水分摂取を促したりします。また球場に待機している理学療法士や医師にも選手の状態をより注視してもらうなど、臨機応変な対応をしていきます」

インハイも大変だと…暑さ対策に万全を期しますが

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――JFA(日本サッカー協会)は、WBGTが31以上の場合は原則的に試合はしない、と決めています。

「2023年のインターハイ(全国高校総体)は北海道で行われましたが、涼しいはずの北海道で気温が35度になってテニスや陸上競技など、複数の競技運営が大変だったと聞いています。これからはそういう時代になってきています。

 確かにそういうことも考慮すべきでしょうが、野球は攻守交代があるので、少し事情が違うと思います。もちろん暑さ対策には万全を期しますが、必ずしも他の競技と同列で考えることはできないと思っています」

選手だけでなく…観客、吹奏楽部への対応は?

――インターハイなどは観客席がいっぱいになることは少ないが、甲子園の場合、多くの観客や応援団が観戦に訪れる。こうした観客席の暑さ対策も気になります。

「都道府県大会も同様ですが、高校野球は、入場料収入を主な収入源に大会を運営しています。

 観客のみなさんは、暑い中を自分の意思でお金を払って観戦に来られます。そうはいっても、観客席で大きなアクシデントはあってはならない。私たちも気を使っているところです。熱中症になった人は、救護室で手当てをしています。

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