酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「木製と大差ない」“飛ばない金属バット”高校野球指導者の多くは「つなぐ野球」を選ばず…「導入1年目の甲子園は急落した」打撃成績に異変
posted2025/08/05 06:00
新規格バット導入1年目の2024年は木製バットを使用する球児がいた。2025年に入って高校野球界にはどんな傾向が見える?
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
矢継ぎ早の高校野球改革…どこに向かうのか
梅雨が異常に短くて6月中旬から全国で猛暑日が続く中、今年も「夏の高校野球」が地方大会から開催され、夏の甲子園開幕を迎えようとしている。
DH制導入決定もしかりだが――近年の高校野球は矢継ぎ早の「改革」「新たな取り組み」「その検討」の連続だった。筆者はその変化を追いかけている一方で、率直に言ってそのスピードに追い付けない感があった。そこで、再度、日本高野連に赴き、「今、高校野球は、どこへ行こうとしているのか」について、話を聞くことにした。
まずは新規格の金属バットの問題からだ。
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昨春、高校野球は新たな規格の金属バットを導入した。この背景を説明する前に、2000~2019年までの春・夏の甲子園での1試合当たりの本塁打数を見るとわかりやすい。
2000年から2009年=春0.44本、夏0.73本
2010年から2019年=春0.54本、夏0.86本
明らかに増加して、打球速度が上がっていた。
これに伴い、投手や野手が打球で負傷するリスクが年々高まっていた。2019年夏の甲子園では、岡山学芸館高校の投手が顔面に打球を受けて救急搬送され、「左顔面骨骨折」の大けがを負った。これを受けて、日本高野連は2022年、新基準の金属バットの導入を決めた。
【最大径】64mm未満とする(従来は67mm未満)
【打球部肉厚】約4mm(従来は約3mm)
基準を満たしたバットには従来の「N」に代わって「R」のマークが表示された。新たな「R」規格の金属バットは、2024年の選抜から導入された。買い換えは新たな経済的負担となることから、日本高野連は、2023年秋以降、希望した加盟校3814校に新規格バットを3本ずつ配布した。
新規格バット導入前と導入後…打撃成績はどうなった?
新規格金属バットに対する高校野球現場の反応は「芯を食わないと飛ばなくなった」「打球速度が落ちた」だった。木製バットとの使用感の違いは小さくなったという選手も増えた。
果たして――24年春・夏の甲子園では、前年とは大きく異なるデータとなった。導入前年の成績と比較しよう。得点の後ろのカッコは両チームの1試合平均得点数。

